本記事では数学Ⅰや数学Aの基礎となる「集合と要素」について、その表し方や記号の使い方を解説していきます。
✓本記事の内容
・数学における集合とは
・集合と要素について
・集合の2通りの表し方
練習問題も用意していますので、解きながら理解を深めていきましょう!
数学における集合とは
普段使う「集合」という言葉と、数学における「集合」は異なります。
集合とは「範囲がはっきりしたものの集まり」のこと
日本語で集合といえば、単なるものの集まりのことを指しますが、数学では「範囲がはっきりしたものの集まり」のことを集合といいます。
次の問を見てみましょう。
問 次の集まりは数学における集合といえるか?
(1) 10以下の自然数全体の集まり
(2) 身長170cm以上の人の集まり
(3) 数学ができる人の集まり
(4) かわいいネコの集まり
解答
(1) 10以下の自然数全体の集まり
集合である
(2) 身長170cm以上の人の集まり
集合である
(3) 数学ができる人の集まり
集合ではない
数学ができるとはどの程度なのか分からないため、範囲がはっきりしていない
(4) かわいいネコの集まり
集合ではない
かわいいの基準が明確でないため、範囲がはっきりしていない
このように数学においては「範囲がはっきりしている」もののみを集合として扱います。
集合と要素について
要素とは
集合を構成している1つ1つのものを、その集合の「要素」と呼びます。
要素・・・集合を構成している1つ1つのもの
例を見てみましょう。
例 A高校の1年生(aさん,bさん,cさん,…)について
aさんはA高校の要素
bさんはA高校の要素
cさんはA高校の要素
このように,集合を構成している1つ1つのものを、その集合の要素といいます。
aさんはA高校に「属する」という言い方もします。
要素を表す記号
要素を表す記号は次のようなものです。
\( a\) が集合\( A \) の要素であるとき,\( a\) は集合に属すると言い、次のように表す.
\( a\in A\)
ここで登場する記号\( \in \)は、アルファベットのUの字を横にして、真ん中に線を一本入れたような形をしていますね。
この記号を使うときは、丸くなっている方を、要素の方に向けて書くようにします。
\(\; a\in A\; \) の順番を逆にして \(\; a\ni A\; \)と書くこともできますよ。
逆に\( b \) が集合\( A \) の要素ではない場合は,次のように表現します。
\( b\) が集合\( A \) の要素ではないことを次のように表す.
\( b\notin A\)
\(\; \in \; \)の記号に線を引くことで「\( b \) は集合\( A \) の要素ではない」と否定をします。
集合と要素の練習問題
それでは練習問題を解いてみましょう。
問題 整数全体の集合を\( Z \) とする。次の□の中に,\( \in \) または\( \ni \) のいずれか適するものを書き入れなさい.
(1) \( 5 □ Z \)
(2) \( \sqrt{2} □ Z \)
解答
(1) \( 5 \) は整数全体の集合\( Z\) に属しているので
\( 5 \in Z\)
(2) \( \sqrt{2} \)は整数ではありません。整数全体の集合\( Z \) に属していないので
\( \sqrt{2}\notin Z \)
集合の表し方
続いて集合の表し方を見ていきましょう。
表し方を決めて統一しておくことで、だれでも安心して集合を表現していくことが可能になります。
集合には次の2通りの表し方があります。
①要素を書き並べる方法
②要素の満たす条件を書く方法
順番に解説していきます。
①要素を書き並べる方法
まずは要素を書き並べる方法について解説します。
これは,集合の要素が目で見てすぐに分かるので,分かりやすくよく使う方法です。
次のように表現します。
\( 10 \) の正の約数集合\( A \) を,要素を書き並べて表すと
\( A=\{ 1, \; 2,\; 5,\; 10 \} \)
【要素を書き並べて書くときの注意点】
①集合は大文字で表し「\( A=\)」のように「\( = \) 」を使う
②中カッコ\( \{ \; \} \) の中に集合の要素を書く
③集合の要素が数字の場合は,原則として小さい順に書く
④要素は「,」で区切って書く
②要素の満たす条件を書く方法
集合のもう1つの表し方として、要素の満たす条件を書く方法もあります。
次のように表現します。
\( 10 \) の正の約数集合\( A \) を,要素の条件を書く方法で表すと
\( A=\{ x\; | \; x\; \) は10の正の約数 \( \} \)
【要素の条件を書く方法】
①中カッコ内の最初の部分に,集合を代表する文字や文字式を書く
②仕切り線「\(\; | \) 」を書く
③仕切り線の右側に,文字が満たす条件を書く
今回は\( 10\) の約数の集合を代表する要素を,文字\( x \) で表し,その文字\( x \)の満たす条件「\( x \) は10の正の約数」を仕切り線の右側に書きます。
要するにこの書き方は、集合の説明を書く方法です。
集合の表し方の練習問題
それでは集合の表し方に関する練習問題を解いてみましょう。
問題 次の集合を,要素を書き並べる方法で表しなさい.
(1) \( 1\) けたの素数の集合\( A\)
(2) \( 30\) 以下の正の偶数の集合\( B\)
解答
(1) \( A=\{ 2,\; 3,\; 5,\; 7 \}\)
素数とは「1とその数自身以外に約数を持たない数」のことです。
ただし,1は除きます。
(2) \( B=\{ 2,\; 4,\; 6,\cdots ,30 \} \)
30以下の正の偶数をすべて書き並べるのは大変ですので,このように「\( \cdots \) 」
を用いて表現します。
※このように,集合の要素の数が多い場合には省略記号「\( \cdots \) 」を用いて表すことがあります。
次に「②要素の満たす条件を書く方法」で表された集合を「①要素を書き並べる方法」で表してみましょう。
問題 次の集合を,要素を書き並べる方法で表しなさい.
(1) \( A=\{ x \; | \; -2≦ x<2,x\) は整数\( \} \)
(2) \( B=\{ 2n-1\; | \; n\) は自然数\( \}\)
解答
(1) \( A=\{ -2,\; -1,\; 0,\; 1 \}\)
\( -2≦ x<2\) の整数をすべて書き並べます。
\( -2 \) は含み,\( 2 \) は含まないことに注意しましょう。
(2) \( B=\{ 1,\; 3,\; 5,\; \cdots \}\)
今回は要素を代表する文字式が「\( 2n-1\) 」となっており、条件は\( n\) は自然数となっています。したがって各要素は「\( 2n-1\) 」の\( n\) に自然数(\( 1,\; 2,\; 3,\; \cdots \; \) )を代入したものになります。
集合の要素は無限にあるので、省略記号「\( \cdots \) 」を使いましょう。
まとめ
今回は数学における集合と要素の意味、記号の使い方、集合の表し方について解説をしました。
数学における「集合」は、範囲がはっきりと定まるものであり、日常生活で使う集合とは言葉の意味がやや異なりました。
実は、ほとんどすべての数学の対象は集合を用いて表されます。
つまり集合は数学を学習していく際に避けては通れない分野です。
別の記事も追加していく予定ですので、少しずつ集合の考え方や扱い方を身につけていきましょう!