今回は、乗法公式(展開の公式)を図で理解する方法について解説していきます。
乗法公式が、最初に出てくるのは中学3年生。その後、高校の数学Ⅰでも登場し、数学のあらゆる場面で現れる重要な公式です。
乗法公式は展開の方法を使ってカッコをはずせば、すべて導くことは可能です。
でもそれだけでは、あまり面白くない。
そこで、本記事では図形の面積、特に長方形の面積を用いて乗法公式を読み解いていきます。
(参考)次のインド式計算も同じ考え方です!
今回扱う乗法公式(展開の公式)は以下の4つです。
\begin{align}
&① (a+b)^2=a^2+2ab+b^2\\
&② (a-b)^2=a^2-2ab+b^2\\
&③ (a+b)(a-b)=a^2-b^2\\
&④ (x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab
\end{align}
これらの公式を、図形の面積を用いて導いていきます!
それでは見ていきましょう。
乗法公式\( (a+b)^2=a^2+2ab+b^2 \)を図で理解
まずは\(\; (a+b)^2=a^2+2ab+b^2 \; \) です。
左辺の\( \; (a+b)^2 \; \) は次のような正方形の面積となります。
これを、バラバラにして次のように並べます。
上の図を式で表すと、面積が\( \; ab \; \) である長方形が2つあることから,\( a^2+2ab+b^2\) となります。したがって
\[ (a+b)^2=a^2+2ab+b^2 \]
を図形の面積で示すことができました!
乗法公式\( (a-b)^2=a^2-2ab+b^2 \)を図で理解
次に\(\; (a-b)^2=a^2-2ab+b^2 \; \) です。
左辺の\( \; (a-b)^2 \; \) は次のような正方形の面積となります。
この図の色をつけた部分の面積\( \; (a-b)^2\; \) は次のように図を用いて表すことができます。
まずは1辺が\( a \) である正方形の面積から、面積が\( ab \) である細長い長方形を2つ引きます。最初の図の白い部分を取り除いていくわけです。すると、1辺が\( b \) の正方形\( b^2\) を引きすぎてしまうので、最後に\( b^2\)を加えるわけです。
上の図の面積を式で表すと\( a^2-2ab+b^2\) なので
\[ (a-b)^2=a^2-2ab+b^2 \]
を図で示すことができました!
乗法公式\( (a+b)(a-b)=a^2-b^2 \)を図で理解
次は\(\; (a+b)(a-b)=a^2-b^2 \; \) です。
通称「和と差の積の公式」と呼ばれているものです。
この式をそのまま図形の面積で表すのはやや難しいので、式の左辺と右辺を入れ替えた次の式で考えていきます。
\[ a^2-b^2=(a+b)(a-b) \]
を考えてみましょう。
左辺の\( a^2-b^2\) は下の図の色をつけた部分になります。
1辺が\( a \) の正方形の面積\( a^2\) から、1辺が\( b \) の正方形の面積\( b^2 \) を引いたものです。
ここで図の点線より上の長方形を切り取って、右下へ移動します。
すると次の図のような細長い長方形となります。
この図の面積を式で表すと\( (a+b)(a-b) \) となるので
\[ a^2-b^2 =(a+b)(a-b) \]
を図で示すことができました。この式の左辺と右辺を反対にして
\[ (a+b)(a-b)=a^2-b^2 \]
とすれば、最初の乗法公式になります。これで和と差の公式も図で導くことがきました!
乗法公式\( (x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab \)を図で理解
最後に、公式\(\; (x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab \; \) を図で導いていきます。
これはそれほど難しくありません。
左辺の\( \; (x+a)(x+b) \; \) を図で表すと次のようになります。
これをバラバラにして,面積が\( ax \) の長方形と\( bx \) の長方形を組み合わせると、次のようになります。
上の図を式で表すと\( \; x^2+(a+b)x+ab \; \)となるので
\[ (x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab\]
が成り立つことがわかりますね!
まとめ
今回は、次の4つの乗法公式を、図形の面積を用いて導いてみました。
\begin{align}
&① (a+b)^2=a^2+2ab+b^2\\
&② (a-b)^2=a^2-2ab+b^2\\
&③ (a+b)(a-b)=a^2-b^2\\
&④ (x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab
\end{align}
②と③はやや難しかったかもしれません。
公式にマイナスが含まれていても、今回のように工夫すれば、図形の面積で公式を理解することができるのです。この事実は興味深いですよね!
次の本には、\( a^2-b^2=(a+b)(a-b) \) の公式を、台形を使って表現する方法が記載されています。台形のとがった部分の角度が45°であることを見抜く必要がありますが、とても興味深い方法です!
今回は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。