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【おすすめ】旺文社の「入門問題精講義 数学ⅠA」は数学の面白さを味わうことができる、ひと味違った解説型の問題集だった!

今回は、2019年の9月に旺文社から出版された「数学Ⅰ・A 入門問題精講」についての内容紹介です。

この記事を書いている私は、数学検定1級に合格してから、興味の対象は「数学をどう伝えていくか」の方に移行しつつあります。

そんなときに、書店で目にとまったのがこの「入門問題精講 数学Ⅰ・A」。数学の問題集としては珍しくカバーはピンク一色の本です。

パラパラとめくってみると、他のシリーズとちょっと構成が違う!

さっそく、本書を購入し、何日かかけて、全ページをじっくりと読んでみました。

 

この問題集は、大学入試いおいて基礎となる良問を丁寧な「講義」と「例題」で解説した本です。

著者は受験指導で圧倒的な信頼を得ている池田洋介さん。

この手の問題集には珍しく、本書では解説が重視されています。しかも、その解説が工夫されていておもしろい!

それでは「入門問題精講 数学Ⅰ・A」について、詳しく紹介していきます。

「入門問題精講」数学Ⅰ・Aの特徴

まずは、本書の大まかな特徴です。

入門問題精講 数学Ⅰ・Aの特徴

①入試に頻出の基本問題がていねいに解説されている

②問題と解説だけでなく、その背景にある概念が解説されている

③説明の流れが教科書と違う部分があって新鮮

④いろいろな例え話が出てきて面白い

②については例えば

「どうやったら解の公式が導けるのか」

「どうして鈍角の三角比を考える必要があるのか」

など、公式や定理になる前の「考え方」の説明が重視されており、数学という学問を存分に味わうことのできる1冊に仕上がっています。

「はじめに」に記載されていた

魚を与えれば、1日生きていける。釣りの仕方を教えれば、一生生きていける。

という格言通り、本書をきちんとマスターすることで、100問に適用できる「考え方」を学ぶことが可能です。

実況中継のような本と、いわゆるチャートのような本の中間的存在の本であると感じました。

どんな読書層を対象としているのか

本書は次のような方に最適です。

・教科書の理解が一通り済んで、これから大学入試対策を始めようとする人。

・解説が多めの問題集を探している人。

・公式や定理の考え方から理解したい人

・高校や塾・予備校の先生

定理や公式を導く過程が丁寧に説明されているので、数学を基礎からしっかりと学びたいという人に特におすすめです。

私自身も読んでいて、「ドリル的な問題を何題もこなすより、本書で数学の概念をきちんと学んだ方がいい!」と強く感じました。

ただし、注意点としては、本書には「整数」の内容は含まれていません。

興味深かった解説

それでは、数学Ⅰ・Aの各分野ごとに、私が興味を持った部分についてご紹介していきます。

1.数と式

たすき掛けを効率よくやるための方法を、定数項が正の場合と負の場合にわけて、丁寧に解説してくれている。たすき掛けの手間を減らすテクニックも紹介されており、このような文章にしにくい内容を伝えている問題集は貴重。

◆解の判別を「解の公式」からではなく「2次方程式を平方完成で解く過程」から説明しているのが目新しい。もちろん、後半では解の公式との関連についてもふれています。

2.関数

◆1次関数のグラフは、比例のグラフを平行移動したものとして説明

◆1次関数と2次関数の式を並べて、「aは形状を決めるもの、bやp,qは位置を決めるもの」とまとめているところはvery good! 気に入りました。

◆2次関数には3つの形があるとはっきりと明示している
・一般形
・標準形
・因数分解形

3.三角比

◆三角比の導入は、川の幅を測るという具体例から出発。「縮図をノートに書いて、相似を使って求める」という、三角比が生まれるきっかけの記述が、とても気に入りました!

◆鈍角の三角比については、鋭角の三角比の斜辺を1にしてから、単位円を導入します。「数学ガール」という本でもこの方法を用いていて、これからメジャーな教え方になって欲しいものです。$$\sin \theta =\frac{y}{r}$$から入るとつまずく生徒が出てきます。

◆「タンジェント」は「傾き」と言い切っている。この説明の方が応用力がつきます。

◆面積公式と余弦定理の導出を比較しながら説明。この二つはとても良く似ているので、同時並行で解説するとスッキリとしていて分かりやすいと思いました。

4.場合の数

◆円順列を求める際、「一つを固定する」という考え方よりも、「いったん区別して、重複度で割る」という考え方を重視している(両方の考え方を説明)。後者はいろいろな場面で応用がききます。

◆道順の問題や部屋割りの問題では「1対1の対応」という視点から解説。まさに、目からうろこです。

5.確率

◆確率では「和の法則」と「余事象の確率」を「たし算」「ひき算」としてまとめている。このアイディアはgood!その後「かけ算」として「独立」の説明に入っていきます。

◆反復試行への導入が工夫されている。

◆条件付き確率や事後の確率を面積図を使って解説。この面積図での説明は初めて見ました。

6.データの分析

◆データの「偏り」のイメージを、電車に乗っている乗客の密度で説明。これは本当にイメージしやすい!

7.集合

◆数学で使う「または」が日常生活で使う「または」とややニュアンスが違うことについての説明がgood!

必要条件、十分条件の直感的説明があります。多くの指導者が避けているであろう部分に、あえて踏み込んでいるところがすばらしいです。

興味深かった言葉

本書では、予備校での講義のような雰囲気があり、所々で興味深い言葉が見受けられました。その一部を抜粋させていただきます。

公式が出るまでが一番おもしろい

 

最も「すっぴん」の2次関数は・・・

 

何度も繰り返していると、「頻繁に登場する形」があることに気が付きます。そのようなものについては、「型」を作っておくと途中の式を書く手間が省けて便利そうです。この「型」が私たちが「公式」と呼ぶものです。

 

バラバラにするのが展開、組み立てるのが因数分解。精巧な時計をバラバラの部品に分解することは、子どもでも簡単だが、組み立てて、元通りの時計を作るのは大人でも難しい。

 

2次方程式と2次関数の違いの例えで

「フランス人」と「フランスパン」が違うのと同じことです

 

2次不等式を2次関数のグラフを使って解く問題で

空間の世界に生きる私たちが地面で生きるアリよりも多くのことを見通すことができるように、低い次元にいる人には複雑に見えることが、高い次元に立っている人にとってはとてもシンプルにとらえられるようなことが、数学ではよくあります。

 

勘違いしないでほしいのは、tanという記号が与えてくれるのは「値を計算する」補法ではなく、「計算できない値をとりあえず書き表しておく」方法だということです。

 

おなじみの公式が「三角比」というブースターをつけることで、さらに汎用性の高い公式にパワーアップしたおいう感じが、とても面白いですね。

 

これらは、ほんのごく一部です。このような、著者の心からの言葉は、読む人の印象に残りやすいです。

しかも、興味深い話ばかりです!

コラムで目を引いた記述

コラムと称して、間違いやすい問題などの紹介があります。2つほど、例を引用させていただきます。

◆「2の100乗から2の99乗を引いたら2の何乗になる?」

◆sin(180°―θ)では分配法則ができない

まとめ

旺文社の基礎問題精講や標準問題精講は受験用のやや堅いイメージがありますが(もちろん素晴らしい問題集です)が、本書の内容はこれらとはひと味違うものでした。

公式や定理ができる「考え方」の説明が重視されており、数学という学問を存分に味わうことのできる1冊でした。

教科書が一通り終わり「これから受験数学を始めよう」という方に特におすすめです。また、教える立場にある方にも是非、目を通してほしいと思う本でもありました。

全体を通して、「数学って面白いな」と感じさせてくれるものに仕上がっていると思いました。

旺文社「入門問題精講 数学Ⅰ・A」おすすめです!

 

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