今回は「3つの集合の要素の個数」についての定理についてみていきましょう。
「2つの集合の要素の個数」についてはイメージもしやすいと思いますが、3つとなると式も複雑になり図でイメージするのがやや難しくなります。
本記事では、3つの集合について、「集合の要素の個数に関する定理」がどうして成り立つのか、3通りの方法で解説します。
1.ベン図で証明
2.式変形で証明(ベン図も使います)
3.教科書の方法で証明
今回使う考え方【面積を求める】
問 次の面積を求めよ。だたし、1目盛りの長さを1とする。
解答 1つの正方形の面積が\( 1\) となります。
次のように計算することをおすすめします。
\begin{align}
5\times 5 +4\times 4 -3 &=25+16-3\\
&=38
\end{align}
1辺の長さが\( 5\) の正方形と,1辺の長さが\( 4\) の正方形の面積を足して,重なった部分(足しすぎた部分)の面積\( 3\) を引きます。
共通部分と和集合
次に、共通部分と和集合の復習です。
2つの集合\( A,B\) の場合
共通部分・・・\( A\) と\( B\) の重なる部分 \(\underline{A\cap B}\)とかく
和集合・・・\( A\) と\( B\) を合わせた部分 \( \underline{A\cup B} \) とかく
3つの集合の場合
共通部分・・・\( A\) と\( B\) と\( C\) の重なる部分 \(\underline{A\cap B\cap C}\)とかく
和集合・・・\( A\) と\( B\)と\( C \) を合わせた部分 \( \underline{A\cup B\cup C} \) とかく
集合の要素の個数
ではいよいよ集合の要素の個数について見ていきましょう。
集合の要素の個数(2つの場合)
2つの集合の要素の個数については次の式が成り立ちます。
集合の要素の個数(2つの集合)
\[ n(A\cup B)=n(A)+n(B)-n(A\cap B) \]
ベン図を使って、マス目の面積を求めたのと同じ方法で考えれば明らかですね。
\( n(A)\) と\(n(B) \)を足して,重なった部分(足しすぎた部分)\( n(A\cap B)\) を引きましょう。
集合の要素の個数(3つの場合)
それでは、3つの集合の要素の個数についてみていきましょう。
公式は以下の通りです。
集合の要素の個数(3つの集合)
\begin{align}
n(A\cup B\cup C)&=n(A)+n(B)+n(C)\\
&-n(A\cap B) -n(B\cap C)-n(C\cap A)\\
&+n(A\cap B \cap C)
\end{align}
では、ここからはこの3つの集合の要素の個数がどうして成り立つのかを解説していきます。
「3つの集合の要素の個数」をベン図で証明
まずは、3つの 集合の要素の個数の公式ををベン図を 用いて証明してみます。
\begin{align}
n(A\cup B\cup C)&=n(A)+n(B)+n(C)\\
&-n(A\cap B) -n(B\cap C)-n(C\cap A)\\
&+n(A\cap B \cap C)
\end{align}
公式の(右辺)の最初の3つの項,\( n(A)+n(B)+n(C)\; \) は\( A\)と\( B\) と\( C \) を重ねたもので,次のようになります。
ここでは、3つの円の紙が重なったイメージを持ってください。
図にかかれた数字は、紙が何枚重なっているかを表したものです。
この\(\; n(A)+n(B)+n(C)\; \)から、重なった部分を取り除いていき、最終的には重なりのない、次の図の形\(\; n(A\cup B \cup C)\; \)にすることを目標とします。
すべての領域で、紙の枚数が1枚になるように調整していきます。
調整開始!
それでは、円形の紙の重なりがなくなるように、調整をしていきましょう。
まずは\(\; n(A)+n(B)+n(C)\; \) からスタートです。
ここから,次の\(\; n(A\cap B)\)を引きます。
すると,紙の枚数は次のようになります。
\( n(A)+n(B)+n(C)-n(A\cap B) \; \)
続いて,ここから,次の\( \; n(B\cap C )\; \) の部分を引きます。
すると,紙の枚数は次のようになります。
\( n(A)+n(B)+n(C)-n(A\cap B)-n(B\cap C) \; \)
もう少しですね!
ではここから,2枚重なっている部分を解消するために,次の\(\; n(C\cap A) \; \) の部分を引きます。
すると,紙の枚数は次のようになります。
\( n(A)+n(B)+n(C)-n(A\cap B)-n(B\cap C)-n(C\cap A) \; \)
真ん中の部分だけ0枚になってしまいました。
そこで最後に、次の\( \; n(A\cap B \cap C) \; \) の部分を加えます。
すると、次のようになります。
\begin{align}
&n(A)+n(B)+n(C)\\
&\quad -n(A\cap B)-n(B\cap C)-n(C\cap A)\\
&\quad +n(A\cap B\cap C)
\end{align}
これで、すべての部分の数字が1となり、重なりのない\( \; n(A\cup B \cup C)\; \) を作ることができました!!
以上の結果から
\begin{align}
n(A\cup B\cup C)&=n(A)+n(B)+n(C)\\
&\quad -n(A\cap B) -n(B\cap C)-n(C\cap A)\\
&\quad +n(A\cap B \cap C)
\end{align}
が成り立つことが分かりました。
「3つの集合の要素の個数」を式変形で証明
次に、3つの集合の要素の個数を式変形で証明してみます。
とはいっても、まともにやると大変ですので、準備の式の証明にベン図を使うことにします。
準備1 \( n((A\cup B)\cap C)=n((A\cap C)\cup(B\cap C))\)
分配法則のような性質が成り立ちます。
まず左辺は
\( \; A \cup B \; \)である
と、\(\; C\; \) である
の共通部分の個数なので
上の図の赤い部分の個数となります。
一方、右辺は
\( \; A\cap C \; \) である
と、\( \; B\cap C\; \) である
の和集合の個数なので,先ほどと同じ、下図の部分の個数となるのです。
これで、\( n(A\cup B)\cap C)=n((A\cap C)\cup(B\cap C))\; \)を示すことができました。
準備2 \( n((A\cap B)\cap (B\cap C))=n(A\cap B \cap C)\)
これは、ベン図を使わなくても分かりますが、念のため確認しておきましょう。
左辺は
\( \; A\cap B\; \) である
と、\( \; B\cap C\; \) である
の共通部分なので
上の図の部分の個数となり、右辺の\( n(A\cap B \cap C)\)と等しいことが分かります。
式変形による証明
では本記事の一番最初に示した式
\[ n(A\cup B)=n(A)+n(B)-n(A\cap B) \cdots ①\]
と、上の準備で示した2つの式
\[ n(A\cup B)\cap C)=n((A\cap C)\cup(B\cap C))\cdots ②\]
\[ n((A\cap C) \cap (B\cap C))=n(A\cap B \cap C)\cdots ③\]
を用いて,3つの集合の要素の個数の公式を導いていきます。
\begin{align}
&n(A\cup B \cup C)\\
&=n((A\cup B)\cup C)\\
&=n(A\cup B)+n(C)-n((A\cup B) \cap C)\quad (①より)\\
&=n(A\cup B)+n(C)-n((A\cap C)\cup(B\cap C))\quad (②より)\\
&=n(A\cup B)+n(C)\\
&\qquad -\{ n(A\cap C)+n(B\cap C)-n((A\cap B)\cap (B\cap C))\} \quad (①より)\\
&=n(A\cup B)+n(C)\\
&\qquad -\{ n(A\cap C)+n(B\cap C)-n(A\cap B\cap C)\} \quad (③より)\\
&=n(A)+n(B)-n(A\cap B)+n(C)\\
&\qquad -n(A\cap C)-n(B\cap C)+n(A\cap B\cap C) \quad (①より)\\
&=n(A)+n(B)+n(C)\\
&\qquad -n(A\cap B)-n(B\cap C)-n(C\cap A)\\
&\qquad +n(A\cap B\cap C)
\end{align}
式を追うのが大変ですね。
準備の式の証明でベン図を使いましたが、式変形の感覚を味わっていただけたのではないかと思います。
「3つの集合の要素の個数」を教科書の方法で解説
最後は、教科書の方法です。
これは簡単ですが、天下り的です。
\begin{align}
n(A\cup B\cup C)&=n(A)+n(B)+n(C)\\
&-n(A\cap B) -n(B\cap C)-n(C\cap A)\\
&+n(A\cap B \cap C)
\end{align}
次の図のように,各領域の要素の個数を\( a,\; b,\; c,\; d,\; e,\; f,\; g \; \) とします。
公式の左辺は
\[ n(A\cup B\cup C)=a+b+c+d+e+f+g \]
公式の右辺は
\begin{align}
&n(A)+n(B)+n(C)\\
&\quad -n(A\cap B) -n(B\cap C)-n(C\cap A)\\
&\quad +n(A\cap B \cap C)\\
=&(a+d+f+g)+(b+d+e+g)+(c+e+f+g)\\
&\quad -(d+g)-(e+g)-(f+g)+g\\
=&a+b+c+d+e+f+g
\end{align}
となるので
\[ (左辺)=(右辺)\]
となり成り立ちます。
まとめ
今回は、3つの集合の要素の個数の公式について、3通りの方法で解説してきました。
この式を初めて見たときは、複雑すぎて混乱したかもしれません。
しかし、最初に解説したベン図を使ったイメージを持っておけば、式を丸暗記することなく頭に入れることができるはずです。
3つの集合の要素の個数に関する問題は大学入試でも頻出です。
自然に使いこなせるように練習を重ねておきましょう。
今回は以上です。最後までお疲れ様でした。