「20%引きの商品が、レジでさらに20%引き」はトータル何%引きなのでしょうか?
結論から言うと「20%+20%で40%引き」ではありません。
本記事では、この理由を詳しく解説するとともに、次のような場合について、どれが一番お得なのかについても考えていきます。
「20%引きの商品が、レジでさらに20%引き」
「25%引きの商品が、レジでさらに15%引き」
「30%引きの商品が、レジでさらに10%引き」
「35%引きの商品が、レジでさらに5%引き」
「40%引きの商品が、レジで値引きなし」
※「最初の値引きの割合(%)」と「レジでの値引きの割合(%)」の和が40%のケース
さらに、関数のグラフを用いてこれらの結果についての考察もしてみたいと思います。
割合の復習
まずは、割合の復習からスタートしましょう。
「割合」=「比べられる量」÷「もとにする量」
割合は次の式で求めることができます。
「割合」=「比べられる量」÷「もとにする量」
つまり、「割合」は「比べられる量」が「もとにする量」の「何倍であるか」を示したものになっています。
では次の問題を解いてみましょう。
問 20問のうち、12問が正解だったときの正答の割合を求めよ
この場合の割合は、12を20で割って
\[ 12\div 20 =0.6\]
となります。
この割合に100をかけて見やすくしたものが「百分率」で、単位は「%」を使います。
\[0.6\times 100=60\; (%)\]
つまり、正答率は60%となります。
「比べられる量」=「もとにする量」×「割合」
「割合」は「比べられる量」が「もとにする量」の「何倍であるか」を示したものでした。
したがって、「もとにする量」に割合をかけることで、対象になっている「比べられる量」を求めることができます。
「比べられる量」=「もとにする量」×「割合」
これを用いて、次の問題を解いてみましょう。
問 20問を解いたときの正答率が60%であった。正解した問題数を求めよ。
まずは百分率の60%を、小数(または分数)に直します。100で割ればOKです。
\[ 60\; (%)\div 100=0.6 \]
先ほどの式で示したように、「もとにする量」20問に「割合」の0.6をかけます。
\[ 20\; (問)×0.6=12\; (問)\]
ですね。これが答えです。
「割合」→「かけるもの」
と覚えておくとよいでしょう!
値引きの問題
では、次の問題を考えてみましょう。
問 3,000円の20%引きはいくらか?
まずは「20%」を小数(または分数)に直します。100で割りましょう。
\[ 20\div 100=0.2 \]
次に、「割合」は「かけるもの」でしたので、3000円に0.2をかけます。
すると
\[ 3,000\; (円)×0.2=600\; (円)\cdots ①\]
これが値引き額です。
値引き額が600円なので、値引き後の価格は
\[ 3,000\; (円)-600\; (円)=2,400\; (円)\cdots ②\]
となります。
値引きの公式
上で出てきた①②の式をまとめて書いてみます。
3000円から3000円の20%(0.2倍)を引くので
\[ 3000-3000×0.2=2400\]
となります。ここで左辺の式を3000でくくり出すと
\[ 3000\times (1-0.2)=2400\]
となります。
ここで導いた左辺の式を「値引きの公式」として頭に入れておくと便利です。
まとめると次のようになります。
値引きの割合を\( x \) とすると
\[ (値引き後の価格)=(もとの価格) \times (1-x) \]
※上の問題では\( (もとの価格)=3000,\; x=0.2 \)です
「20%引きの商品が、レジでさらに20%引き」は何%引きか?
では、本記事のタイトルでもある問題を考えてみましょう。
問「20%引きの商品が、レジでさらに20%引き」は何%引きか?
いくらの商品かということが書かれていませんので、仮に1,000円の商品として話を進めていきます。
まず、20%を100で割って0.2に直し、先ほどの「値引きの公式」を使っていきます。
1. 最初の20%の引き
\begin{align}
1000\times (1-0.2)&=1000\times 0.8\\
&=800\; \cdots ③
\end{align}
ですので、最初の値引きで800円となります。
2.レジでのさらに20%引き
\begin{align}
800\times (1-0.2)&=800\times 0.8\\
&=640\; \cdots ④
\end{align}
となり、最終的には640円で購入できます。
このときの値引き額は360円ですので
\[360 \div 1000=0.36 \cdots ⑤\]
から36%引きとなります。
※この後、もっと簡単に求める方法を解説します。
もとの値段がわからなくても大丈夫
ここでは、もとの値段を1,000円として話を進めましたが、実はもとの値段がわからなくても値引きの割合を求めることが可能です。
③④⑤の式をまとめて書いてみます。
やや複雑ですが頑張って式を追ってみてください。
下から2行目の式では1000をくくり出しています。
\begin{align}
&1000-1000\times (1-0.2)\times (1-0.2) \\
&=1000-1000\times 0.8 \times 0.8\\
&=1000-1000\times 0.64 \\
&=1000\times (1-0.64)\\
&=1000\times 0.36\\
&=360
\end{align}
実は、下から2行目の式の0.36が値引きの割合になっています。
したがって、もとの値段1000円に関係なく、この0.36から36%引きということが分かるのです。
簡単に値引きの割合と求める!
では仮に設定した元の値段1000円を使わずに、値引きの割合を求める方法をご紹介します。
やり方は簡単で、次のように割合どうしのかけ算をしていきます。
まず20%引きを2回続けて計算します。
\begin{align}
(1-0.2)\times (1-0.2)&=0.8\times 0.8\\
&=0.64
\end{align}
これより64%のつぎ金額で買ったことわかります。
次に1から0.64を引いて
\[ 1-0.64=0.36 \]
とすれば終了です。
ここから36%引きということが分かるのです!
「最初の値引き」と「レジでの値引き」の割合を変えてみる
では、「最初の値引き」と「レジでの値引き」の割合を、「20%,20%」から変えたらどうなるのでしょうか?
次のケースで比較してみましょう。
①「20%引きの商品が、レジでさらに20%引き」
②「25%引きの商品が、レジでさらに15%引き」
③「30%引きの商品が、レジでさらに10%引き」
④「35%引きの商品が、レジでさらに5%引き」
⑤「40%引きの商品が、レジで値引きなし」
①「20%引きの商品が、レジでさらに20%引き」
これは先ほど計算したように,36%引きとなります。
②「25%引きの商品が、レジでさらに15%引き」
25%と15%をそれぞれ、0.25,0.15に直して
\begin{align}
(1-0.25)\times (1-0.15)&=0.75\times 0.805\\
&=0.6375
\end{align}
よって値引きの割合は
\[ 1-0.6375=0.3625]
となり、36.25%引きとなりました。
値引きの割合が20%,20%のときよりも少しだけ多くなっています。
③「30%引きの商品が、レジでさらに10%引き」
30%と10%をそれぞれ、0.3,0.1に直して
\begin{align}
(1-0.3)\times (1-0.1)&=0.7\times 0.9\\
&=0.63
\end{align}
よって値引きの割合は
\[ 1-0.63=0.37]
となり、37%引きと,値引きの割合がさらに多くなりました。
④「35%引きの商品が、レジでさらに5%引き」
35%と5%をそれぞれ、0.35,0.05に直して
\begin{align}
(1-0.35)\times (1-0.05)&=0.65\times 0.95\\
&=0.615
\end{align}
よって値引きの割合は
\[ 1-0.615=0.3825]
となり、38.25%引きとなります。
値引きの割合がどんどん多くなっていますね。
⑤「40%引きの商品が、レジで値引きなし」
この場合の値引きの割合は明らかに40%引きです。
このように,最初の値引きとレジでの値引きの合計を40%としたまま、最初の値引きの割合を徐々に増やしていくと、全体としての値引きの割合は増えていくことが見えてきました。
今回の結果をグラフを用いて考察してみる
では、今回の結果をグラフを用いて考えてみたいと思います。
「最初の値引きの割合を\( x \)」 ,「レジでの値引きの割合を\( y \)」とします。
これらを百分率で表したときの和が40%でしたので
\[ x+y=0.4 \]
つまり
\[ y=0.4-x \cdots ⑥\]
という条件が成り立ちます。
さきほどの例と同じように、割合のかけ算をして全体の割引率を計算してみます。
\begin{align}
(1-x)\times (1-y)&=(1-x)\{ 1-(0.4-x)\} \\
&=(1-x)(0.6+x)\; (⑥より)\\
&=-x^2+0.4x+0.6
\end{align}
となるので、値引きの割合は
\begin{align}
1-(-x^2+0.4x+0.6)&=x^2-0.4x+0.4\\
&=(x-0.2)^2-0.2^2+0.4\\
&=(x-0.2)^2+0.36
\end{align}
となります。後半は平方完成をしました。
この式変形の結果から、\( y \)は\( x \) の2次関数となっており,頂点の座標は\( (0.2,\; 0.36)\) であることがわかります。
グラフは以下の通りです。
\( x=0.2 \) のとき最小値\( 0.36 \) をとります。
グラフから,\( x=0.2\) すなわち「最初の値引きが20%、レジでの値引きが20%」のときが、全体の値引きとしては一番低くなっていることがわかります(図の点A)。
そして、最初の値引きを20%から徐々に増やしていくと、全体の値引きも徐々に増えていくことが、グラフからも確かめられます。
最初の値引きを40%(レジでの値引きなし)にしたときが、全体の値引きが最も大きくなることもをグラフで確認することができます。
まとめ
本記事では「一度値引きをした後、さらにそこから割引をするケース」について考えてきました。
20%引きの商品からさらに20%引いても、40%引きにはなっていないことが理解いただけたのではないかと思います。
さらに、具体例や関数のグラフから次の2つの事実が明らかになりました。
①「2回の値引きの割合が同じとき(20%、20%)、トータルの値引きの割合は最も小さい」
②「2回の値引きの割合の差が大きくなればなるほど、トータルの値引きの割合は大きくなっていく」
とても興味深いですよね!
なんとなく感覚でわかっている気になっていることでも、数学を使ってきちんと考察することはとても大切なことだと日々感じでいます。
今回は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。