・平均って合計を個数で割るだけじゃないの?
・算術平均、幾何平均、調和平均の違いについて知りたい
・加重平均って何?どこで使うの?
こんな疑問を解決します。
本記事では、「いろいろな平均値」とその使い方について解説します。
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私たちが普段使っている「平均」のほとんどが「算術平均」と呼ばれるものです。
算術平均・・・データの合計を個数で割った値
ところが、この算術平均だけではデータの性質をうまく表すことができないケースが存在するのです。
データの種類によって、幾何平均や調和平均、加重平均などを用いる必要性が生じてきます。
本記事では、いろいろな平均とその使い方についてご紹介していきます。
✔︎本記事の内容
・平均はどこで学ぶことができるのか?
・算術平均とその使い方
・幾何平均とその使い方
・調和平均とその使い方
・加重平均とその使い方
それでは「いろいろな平均」について具体例とともに理解を深めていきましょう。
過去に、平均の違いを理解して、効果的な投資を行う方法についての記事も書きましたので、興味のある方はぜひご覧ください。
平均とは
平均とは、読んで字のごとく、平(たい)らに均(なら)した値のことです。
では、私たちはなぜ「平均」を使うのでしょうか?
私たちが「平均」を使う理由は、ある集団におけるデータを1つの数字(平均)で代表させ、全体的な性質を判断するためです。
例えば、ある年のプロ野球選手の平均身長が180.8cmであるという情報から、私たちは「プロ野球選手の身長は高い」と判断します。
あるいは、数学のテストの平均点が30点であったという情報から、この「テストの成績は悪かった」と判断することが可能になります。
このように「平均値」とは、データの特徴を、1つの数値に代表させたものです。
(注)「平均値」のように、複数のデータの特徴を1つの数値に要約して表したものを「代表値」と呼びます。代表値には、「平均値」の他に「中央値」や「最頻値」などが用いられます。
「平均値」には「算術平均」「幾何平均」「調和平均」など様々な種類があります。
本記事では、様々な平均値について、具体例を交えながら解説していきます。
平均はどこで学べるの?
現行のカリキュラムでは(小学校から高校まで)、さまざまな平均について、系統的に学べるようにはなっていません。
「平均」について詳しく学べる分野は「統計学」です。
したがって、「平均」について深く学ぶためには、統計学の本を参考にすることをおすすめします。
統計学に関する書籍を20冊以上の読んできた私がおすすめする本は(平均に関して)、以下の3冊です。
興味のある方は参考にしてみてください。
この本は、中学レベルの数学の知識から統計学を学んでいくことができます。とても分かりやすい本です。
さまざまな平均について、身近な具体例を用いて解説されています。
統計学を学ぶ際、一番最初に使う本としてお勧めです。
この本をきちんとこなせば、数学検定1級の統計の問題まで解けるようになります。
統計学を系統的にしっかりと学ぶ場合におすすめの本です。
赤本統(統計学入門 (基礎統計学Ⅰ) 東京大学教養学部)に挫折した場合でもこの本なら読み進めることができると思います。
平均については、”算術平均からの偏差の平方和が、他のいかなる一定値からの偏差の平方和よりも小である”といった、興味深い話題も取り上げられていてとても興味深いです。
高校で学ぶ統計学について、教科書の行間を埋めることに力を入れている本で、921ページの大作です。(バラ売りもしています)
高校の内容が中心ですが、大学で学ぶ統計学まで扱っています。
さまざまな話題や歴史的背景についての解説も豊富で楽しく読むことができます。
平均の分野では、(算術平均)≧(幾何平均)≧(調和平均)の図による解説がおすすめです。
それでは、いろいろな平均について解説していきます。
まずは「算術平均」から見ていきましょう。
算術平均(相加平均)とは
データの合計値をデータの個数で割った値を「算術平均」と呼びます。
私たちが、普段「平均」と呼ぶ場合は、この「算術平均」であることがほとんどです。
単に「平均」あるいは「相加平均」と呼ぶこともあります。
算術平均を式で表すと次のようになります。統計学では、算術平均を\(\overline{x}\)のように\( x\) の上に横棒を引いてあらわします。
【算術平均】
\[ \overline{x}=\frac{x_1+x_2+\cdots + x_n}{n}\]
ここで\( x_1,x_2,\cdots ,x_n \) は、\( n\)個のデータの値です
具体例で確認してみましょう。
【例】
ある5人の数学のテスト結果は次のようであった。
\[ \; 50,\; 70,\; 65,\; 40,\; 75 \]
この5人の平均点を求めなさい。
この場合の平均は算術平均を用いて、次のように計算します。
【解答】
\[ \frac{50+70+65+40+75}{5}=60\]
平均点は60点
これは簡単ですね。
続いて、算術平均以外の平均を見ていきましょう!
幾何平均(相乗平均)とは
ある\( n\) 個のデータをすべてかけ合わせた「積」を考え、その「\( n\) 乗根」の形で与えられるものを幾何平均(geometric mean)といいます。
ここでは幾何平均を\( m_G\)で表します
【幾何平均】
\[ m_G={}^n\!\!\!\sqrt{x_1\times x_2\times \cdots \times x_n} \]
\( x_1,x_2,\cdots ,x_n \) は、\( n\)個のデータの値です
データが「比率」である場合、算術平均でなくこの幾何平均を用います。
まずは簡単な例から見ていきましょう。
【例】
ある企業の売り上げ(対前年度比)が、昨年度は1億円から2億円の2倍に、今年度は2億円から16億円の8倍になった。
この2年間で平均何倍になったか。
単純に算術平均
\[ \frac{2+8}{2}=5 (倍)\]
とすると計算が合いません。
1億円×5倍×5倍=25億円
となってしまうからです。
この例のように比率(何倍)を考えるケースでは、幾何平均を用います。
【解答】
\[ {}^2\!\!\!\sqrt{2×8}=\sqrt{16}=4(倍) \]
これより、企業の売り上げは年平均で4倍になったといえます。
念のため確かめてみましょう。
企業の売り上げが平均して1年で4倍になっていますので、2年間だと
\[ 1 (億円)\times 4 (倍) \times 4 (倍) = 16 (億円) \]
となり、幾何平均を使うことで、結果が問題に合っているのがわかりますね。
次は、もう少し現実的な例を考えてみましょう。
【例】
ある投資商品の利回りは、1年目が\( 10\)%、2年目が\( -10\) %、3年目が\( 30\) %であった。
3年間の平均利回りは何%か。
まずは、実際にこの商品を初年度100万円購入したとして、年ごとの残高を計算してみましょう。
初年度に100万円分購入したとすると
1年後は\( 100×(1+0.1)=110万円\)
2年後は\( 110×(1-0.1)=99万円\)
3年後は\( 99×(1+0.3)=128.7万円\)
となります。
もし、今回のケースで平均を算術平均を用いてしまうと、
\[ \frac{10+(-10)+30}{3}=10 (%) \]
ですが、これだと実際の計算と合いません。
この商品を初年度100万円分購入したとすると
\[ 100(万円)\times 1.1\times 1.1\times 1.1=133.1(万円) \]
となり、実際よりも多くなってしまうことが分かります。
この例も「比率」ですので、幾何平均を使いましょう。
※百分率(%)は100で割って小数で計算します
【解答】
\[ {}^3\!\!\!\sqrt{1.1\times 0.9\times 1.3}≒1.087742 \]
平均利回りは8.7742%
これが正しい答えになります。
念のため確かめてみましょう。
年平均で売り上げは約1.0877倍ですので、初年度にこの商品を100万円購入した場合
\[ 100(万円)×1.087742×1.08742×1.0742≒128.7 (万円) \]
となり、実際の結果と合致します。
「比率」の平均を求めるときは「幾何平均」と覚えておきましょう!
調和平均とは
調和平均(harmonic mean)とは「逆数の算術平均の逆数です」
言葉ではやや分かりにくいですね。
式で表すと次のようになります。
【調和平均】
\[ m_H=\frac{n}{\frac{1}{x_1}+\frac{1}{x_2}+\cdots + \frac{1}{x_n}} \]
\( x_1,x_2,\cdots ,x_n \) は、\( n\)個のデータの値です
これでも分かりにくいので具体例で考えてみましょう。
【例】
120kmの道のりを、行きは時速40km、帰りは時速60kmで走ったとする。
このとき、往復の平均の速度を求めなさい。
算術平均だと
\[ \frac{40+60}{2}=50 (km) \]
ですが、これは平均の速度になっていません。
実際に平均の速度を求めてみましょう。
今回のケースでは、120kmの道のりを行きは120km/40km=3時間、帰りは120km/60km=2時間かけて走りますので、往復240kmの道のりを合計5時間かけて走ったことになります。
したがって、平均の速度は240km/5時間=48km/時です。
これが正しい平均の速度です。
この平均の速度48km/時は、算術平均でなく、次の調和平均の式を用いることで、正しく求めることができます。
まずは速度について「逆数の平均」をつくります。\[ \frac{\frac{1}{40}+\frac{1}{60}}{2}=\frac{5}{240} \]次にこの値の逆数を計算します。\[ \frac{240}{5}=48 (km/時) \]
これで完成です!
もちろん上で示した公式に直接代入しても大丈夫です。
このように、一見奇妙な形の平均値が適当であることもあるのです。
最後に、統計学で重要な「加重平均」について解説します。
加重平均とは
加重平均とは、それぞれのデータに重みをつけて算術平均ととる計算方法です。
次の問題を考えてみましょう。
【例】
次の表は、ある飲食店における3種類のランチの価格と、週の販売数を示したものである。
この店のランチの平均単価を求めなさい。
価格 | 販売数 | |
Aランチ | 600円 | 300食 |
Bランチ | 800円 | 150食 |
Cランチ | 1000円 | 50食 |
価格だけの算術平均を求めると
\[ \frac{600+800+1000}{3}=800(円) \]
となりますが、この値は平均単価としてはふさわしくありません。
ランチの種類によって販売数が異なるからです。
平均単価は、合計売上金額を販売数で割る必要があります!
それでは、きちんと計算してみましょう。
\begin{align}
&(合計売上金額)\\
&=600円×300食+800円×150食+1000円×50食\\
&=35000円
\end{align}
\begin{align}
&(販売数)\\
&=300食+150食+50食\\
&=500食
\end{align}
よって
\[(平均単価)=\frac{35000円}{500食}=700(円) \]
となります。
まとめて書くと、次のような解答になります。
【解答】
\[ \frac{600×300+800×150+1000×50}{300+150+50}=700 (円) \]
平均単価は700円
結果が、単純な算術平均よりも低い値になっている理由は、価格の安い商品の方が多く売れているからです。
ここで求めたような算術平均を加重平均または加重算術平均といいます。
販売量という重みが価格にかけられているため、「加重」という言葉が使われているのです。
加重平均を式で表すと次のようになります。
【加重平均】
\[ \overline{x}=\frac{x_1\times w_1+x_2\times w_2+\cdots +x_n\times w_n}{w_1+w_2+\cdots +w_n} \]
\( x_1,x_2,\cdots ,x_n \) は、\( n\)個のデータの値
\( w_1,w_2,・・・,w_n\) は個々のデータに対する重み
この記事の最初で紹介した算術平均
\[ \overline{x}=\frac{x_1+x_2+\cdots + x_n}{n} \]
は分子が単純なデータの和になっているため、単純算術平均と呼ばれることがあります。
これに対して、加重平均の分子は、各データ\( x_1,\; x_2,\; \cdots ,x_n\) に、重み\( w_1,w_2,・・・,w_n\) のがかけられているため、加重算術平均と呼ばれることがあることも覚えておきましょう。
加重平均の意味をイメージしやすい例をもう一問ご紹介します。
【例】
ある学習塾のAクラスとBクラスの2クラスで数学のテストを行った。次の表はそれぞれのクラスの平均点と生徒数を示したものである。
この2クラス全体の平均点を求めなさい。
平均点 | 生徒数 | |
Aクラス | 66点 | 10人 |
Bクラス | 54点 | 30人 |
単純に2つの平均点についての算術平均を計算してみると
\[ \frac{66+54}{2}=60(点) \]
となりますが、この数値は全体の平均点としてはふさわしくありません。
各クラスの人数についての情報が抜け落ちているからです。
このような場合、加重平均を用いるのが適しています。
【解答】
\[ \frac{66×10+54×30}{10+30}=57 (点) \]
全体の平均点は57点
Bクラスの方がAクラスよりも人数が多いため、単純算術平均で得られた60点よりも、低い結果となっています。
平均は「平(たい)らに均(なら)す」ことでしたね。
Aクラスの平均点が66点ということは、Aクラス10人の得点を均(なら)すと、1人あたり66点だったということになります。
極端に言えば、Aクラスの10人が全員66点であったと見なすことができるのです。
これよりAクラス全員の合計点を次のように計算することができます。
\[ 66点 \times 10人 = 660点 \]
同様に、Bクラス全員の合計点も次のように計算できます。
\[ 54点 \times 30人 = 1620点 \]
これらの得点を合計して、2クラスの合計人数、10人+30人=40人で割った値が加重平均です。
加重平均は度数分布表から平均値を求める場合などにも使われる重要な考え方ですので、ぜひマスターしておきましょう。
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本記事ではいろいろな平均値について解説しました。
最後に、平均の公式をまとめておきます。
1.算術平均
(1)単純平均(単純算術平均)
【算術平均】
\[ \overline{x}=\frac{x_1+x_2+\cdots + x_n}{n}\]
\( x_1,x_2,\cdots ,x_n \) は、\( n\)個のデータの値です
(2)加重平均(加重算術平均)
【加重平均】
\[ \overline{x}=\frac{x_1\times w_1+x_2\times w_2+\cdots +x_n\times w_n}{w_1+w_2+\cdots +w_n} \]
\( x_1,x_2,\cdots ,x_n \) は、\( n\)個のデータの値
\( w_1,w_2,・・・,w_n\) は個々のデータに対する重みです
2.幾何平均
【幾何平均】
\[ m_G={}^n\!\!\!\sqrt{x_1\times x_2\times \cdots \times x_n} \]
\( x_1,x_2,\cdots ,x_n \) は、\( n\)個のデータの値です
3.調和平均
【調和平均】
\[ m_H=\frac{n}{\frac{1}{x_1}+\frac{1}{x_2}+\cdots + \frac{1}{x_n}} \]
\( x_1,x_2,\cdots ,x_n \) は、\( n\)個のデータの値です
今回見てきたように、平均値には様々な種類のものが存在しています。
データの種類によってどの平均を用いるのか適切であるのか、きちんと見分けられる力をつけていくことが大切ですね!
以上でいろいろな平均についての解説は終了です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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