今回は「対称式」の性質とその使い方について解説をしていきます!
対称式は高校数学の数学Ⅰ「数と式」の分野などで扱われる重要な内容。
ポイントになるのは「基本対称式」と呼ばれる対称式の基本となる多項式です。
高校で扱う対称式は主に2変数と3変数です。それぞれについて具体的に見ていきましょう。
対称式とは
対称式とは「文字を入れ替えても変わらない多項式」のことです。
例えば\( x^2+y^2 \) は対称式です。
この式で\( x \) と\( y \) を入れ替えると
\[ y^2+x^2\]
となりますが、\( y^2 \) と\( x^2 \) の順番を入れ替えれば元の式と同じ式になります。
他にもいくつか例を挙げておきます
対称式の例(2変数)
\[ x^3+y^3 \]
\[ xy^2+x^2y \]
\[ \frac{a}{b}+\frac{b}{a} \]
\[ a^2+ab+b^2 \]
3変数の対称式
3変数の対称式もよく出題されます。
3変数の対称式とは「3つの文字のうちどの文字を入れ替えても変わらない多項式」のことです。
例えば\( \; x^2+y^2+z^2 \; \)は対称式です。
この式において、\(x \) と\( y\) を入れ替えても、\( x \) と\( z \) を入れ替えても、\( y\) と\( z \) を入れ替えても、元の式と変わりません。
さらに、「\( x \) を\( y \) 、\( y \) を \( z \) 、\( z \) を\( x \) 」というように文字を替えても式は変わりません。
このようにどの文字を入れ替えても元の式と同じ式になる多項式が対称式です。
3変数の対称式の例をいつくか挙げておきます。
対称式の例(3変数)
\[ x^3+y^3+z^3 \]
\[ \frac{1}{x}+\frac{1}{y}+\frac{1}{z} \]
\[ a^2b^2+b^2c^2+c^2a^2 \]
対称式の性質(2変数)
対称式は次に説明する「基本対称式」のみで表すことができます!
これが重要なポイントです。
まずは2変数の場合について見ていきましょう。
2変数の基本対称式
次の対称式を2変数の「基本対称式」と呼びます。
基本対称式(2変数)
\[ x+y \]
\[ xy \]
2変数の対称式は、すべてこの基本対称式で表すことができます。
(証明はやや難しいのでここでは省略します)
例をあげておきます。
2変数の対称式を利用した問題例
問題 \( x=2+\sqrt{3} ,\; y=2-\sqrt{3}\) のとき,次の値を求めよ。
(1) \( x^2+y^2 \)
(2) \( x^2y+xy^2 \)
(3) \( x^3+y^3 \)
(1)~(3)はすべて対称式です。
したがって、これらの式は基本対称式\( \; x+y ,\; xy \; \) で表すことができます。
【解答】
まず準備として基本対称式の値を求めておきます。
\[ x+y=4,\;\; xy=1 \]
(1)
\begin{align}
x^2+y^2&=(x+y)^2-2xy\\
&=4^2-2\times 1\\
&=14
\end{align}
(2)
\begin{align}
x^2y+xy^2&=xy(x+y)\\
&=1\times 4\\
&=4
\end{align}
(3)
\begin{align}
x^3+y^3&=(x+y)^3-3xy(x+y)\\
&=4^3-3\times 1\times 4\\
&=52
\end{align}
【補足説明】
(1)の
\[ x^2+y^2=(x+y)^2-2xy \]
は\( (x+y)^2=x^2+2xy+y^2 \) の\( 2xy \) を左辺に移項すると作れます。
よく出る式なので導けるようにしておきましょう。
(2)の式は因数分解すると、基本対称式で表すことができます。
(3)の
\[ x^3+y^3=(x+y)^3-3xy(x+y) \]
は次のようにして導きます。
\begin{align}
(x+y)^3&=x^3+3x^2y+3xy^2+y^3\quad (3乗の展開公式)\\
&=x^3+y^3+3xy(x+y)\quad (3x^2y+3xy^2を共通因数3xyでくくる)\\
\end{align}
ここで得られた
\[ (x+y)^3=x^3+y^3+3xy(x+y) \]
の\( 3xy(x+y) \) を左辺に移項すると求まります。
この式も非常によく出る式です。導けるようにしておきましょう。
対称式の性質(3変数)
3変数の対称式も次の「基本対称式」で表すことができます!
3変数の基本対称式
次の対称式を3変数の「基本対称式」と呼びます。
基本対称式(3変数)
\[ x+y+y \]
\[ xy+yz+zx \]
\[ xyz \]
3変数の対称式は、すべてこの基本対称式で表すことができます。
1番目の式は3変数の和、3番目の式は3変数の積ですが、
2変数のときとの違いは2番目の式\( xy+yz+zx\) が出てくるところです。
例をあげておきます。
3変数の対称式を利用した問題例
問題 \( x+y+z=2,\; xy+yz+zx=3,\; xyz=4\) のとき,次の値を求めよ。
(1) \( x^2+y^2+y^2 \)
(2) \( \frac{1}{x}+\frac{1}{y}+\frac{1}{z} \)
(3) \( x^3+y^3+z^3 \)
(1)~(3)はすべて対称式です。
したがって、これらの式は基本対称式\( \; x+y+z ,\; xy+yz+zx ,\; xyz \; \) で表すことができます。
【解答】
(1)
\begin{align}
x^2+y^2+z^2&=(x+y+z)^2-2(xy+yz+zx)\\
&=2^2-2\times 3\\
&=-2
\end{align}
(2)
\begin{align}
&\frac{1}{x}+\frac{1}{y}+\frac{1}{z}\\
&=\frac{1}{x\cdot yz}+\frac{1}{y\cdot zx}+\frac{1}{z\cdot xy}\\
&=\frac{yz+zx+xy}{xyz}\\
&=\frac{3}{4}
\end{align}
(3)
\begin{align}
&x^3+y^3+z^3\\
&=(x+y+z)(x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx)+3xyz\\
&=(x+y+z)\{ x^2+y^2+z^2-(xy+yz+zx)\} +3xyz\\
&=2\times \{ (-2)-3\} +3\times 4\\
&=-10+12\\
&=2
\end{align}
【補足説明】
(1)で出てきた式
\[ x^2+y^2+z^2=(x+y+z)^2-2(xy+yz+zx) \]
は次の公式
\[ (x+y+z)^2=x^2+y^2+z^2+2xy+2yz+2zx \]
において\( 2xy+2yz+2zx \) を\(2(xy+yz+zx)\)としてから左辺に移項すると作れます。
この式変形もよく使います。
(2)は通分をします。分母を\( xyz \) にするために、最初の変形で分母分子にそれぞれ\( yz,\; zx,\; xy \) をかけています。
(3)で出てきた式
\begin{align}
&x^3+y^3+z^3\\
&=(x+y+z)(x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx)+3xyz
\end{align}
を作るのは少し大変です。よく出る式なので覚えておいてもよいでしょう。
式の導出については以下の記事を参考にしてみてください。
まとめ
対称式は高校数学の様々な分野でしばしば登場します。
指数関数や三角関数に関連する問題もよく出題されます。
今回の内容をベースにして練習を積み重ねていきましょう。