
根号を含む計算の単元で出てくる「分母の有理化」
いったいなぜ分母の有理化をする必要があるのでしょう?
本記事では、分母の有理化する方法とそのメリットについて解説していきます。
✔︎本記事の内容
- 「分母の有理化」とは?
- 「分母の有理化」やり方を解説
- 「分母の有理化のメリット1」およその値がイメージできる
- 「分母の有理化メリット2」式が簡単になる
それではまず分母の有理化の意味から解説していきます。
「分母の有理化」とは?
分母の有理化とは、簡単に言えば「分母のルートをなくすこと」です。
\[ \frac{1}{\sqrt{2}}\Rightarrow\frac{\sqrt{2}}{2} \]
\( \sqrt{2} \) のような無理数を、\( 2\) のような有理数に変える操作であることから、このような名前がついています。
「分母の有理化」やり方を解説
それではまず、「分母の有理化」のやり方を解説していきます。
分母の項が1つの場合と2つの場合でやり方が異なってきます。
分母の項が1つのとき
分母にあるルートを分母分子にかける
同じルートどうしをかけると、ルートの記号(根号)が消え、根号の中の数字になることを利用します。例えば次のようになります。
\begin{align}
&\sqrt{2}\times \sqrt{2}=2\\
&\sqrt{3}\times \sqrt{3}=3\\
&\sqrt{5}\times \sqrt{5}=5\\
\end{align}
この性質を使って分母を有理化していきます。
例1 \( \displaystyle{\frac{3}{\sqrt{2}}}\)の分母を有理化せよ.
分母にある\( \sqrt{2} \) を分母分子にかけます。
\begin{align}
\frac{3}{\sqrt{2}}&=\frac{3\times \sqrt{2}}{\sqrt{2}\times \sqrt{2}}\\
&=\frac{3\sqrt{2}}{2}
\end{align}
例2 \( \displaystyle{\frac{10}{\sqrt{5}}}\)の分母を有理化せよ.
分母にある\( \sqrt{5} \) を分母分子にかけます。
最後に約分が必要になってくるタイプです。
\begin{align}
\frac{10}{\sqrt{5}}&=\frac{10\times \sqrt{5}}{\sqrt{5}\times \sqrt{5}}\\
&=\frac{10\sqrt{5}}{5}\\
&=2\sqrt{5}\\
\end{align}
分母の項が2つのとき
公式\( (a+b)(a-b)=a^2-b^2\) を利用
この公式を使うと例えば
\begin{align}
(\sqrt{3}+\sqrt{2})(\sqrt{3}-\sqrt{2})&=(\sqrt{3})^2-(\sqrt{2})^2\\
&=3-2\\
&=1
\end{align}
のように根号をなくすことができます。
例3 \( \displaystyle{\frac{1}{\sqrt{3}+\sqrt{2}}}\)の分母を有理化せよ.
分母の\( +\) を\( – \) に変えた\( \sqrt{3}-\sqrt{2} \) を分母分子にかけます。
\begin{align}
\frac{1}{\sqrt{3}+\sqrt{2}}&=\frac{1\times (\sqrt{3}-\sqrt{2})}{(\sqrt{3}+\sqrt{2})(\sqrt{3}-\sqrt{2})}\\
&=\frac{\sqrt{3}-\sqrt{2}}{(\sqrt{3})^2-(\sqrt{2})^2}\\
&=\frac{\sqrt{3}-\sqrt{2}}{3-2}\\
&=\sqrt{3}-\sqrt{2}
\end{align}
【分母の有理化のメリット1】およその値がイメージできる
分母を有理化すると、およその値のイメージができます。
これが分母を有理化するメリットその1です。
次の式を見てください。
\[ \frac{1}{\sqrt{2}}\Rightarrow\frac{\sqrt{2}}{2} \]
分母を有理化する前の式
\[ \frac{1}{\sqrt{2}}\]
は\( 1 \div \sqrt{2} \) という意味ですが,\( 1 \) を\( \sqrt{2}\; (\; =1.414\cdots ) \)で割ると、およそどのくらいの値なのか見当がつきません。
ところが、有理化した式
\[ \frac{\sqrt{2}}{2} \]
であれば\( \sqrt{2}\div 2 \) という意味なので,\( \sqrt{2}\; (\; =1.414\cdots)\) を\( 2 \)で割って,およそ\( 0.707 \)くらいである、ということがわかります!
もう1問見てみましょう。
\[ \frac{6}{\sqrt{3}} \Rightarrow 2\sqrt{3}\]
左辺は\( 6 \div \sqrt{3}\; (\; =1.732)\cdots \) ですがおよそどれくらいか見当がつきにくいですね。
一方有理化した右辺は\( 2 \times \sqrt{3}\; (\; =1.732\cdots )\) なので、およそ\( 3.464\)くらいである、ということがわかります。
【分母の有理化メリット2】式が簡単になる
分母の有理化をすると式が簡単になることがあります。
これが分母を有理化するメリットその2です。
例1 「分母の項が1つ」の解説で扱った式です。
\[ \frac{10}{\sqrt{5}} \Rightarrow 2\sqrt{5}\]
例2 「分母の項が2つ」の解説で扱った有理化です。
\[ \frac{1}{\sqrt{3}+\sqrt{2}}\Rightarrow \sqrt{3}-\sqrt{2} \]
例1も例2も式が簡単になっているのが確認できますね!
まとめ
今回は、分母の有理化のやり方とそのメリットについて解説しました。
分母を有理化することで分母が有理数になるため、およその値のイメージがしやすくなります。
また分母の有理化によって式が簡単になるケースも結構あります。
分母の有理化は必須ではありませんが、式が簡単になる場合は必ず有理化する癖をつけておきましょう。
今回は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。