\( a^3+b^3+c^3-3abc \) の因数分解は次のようになります。
\[ a^3+b^3+c^2-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\]
本記事では、この式の証明の仕方と、この式を利用した練習問題(3題)について詳しく解説していきます。
\( a^3+b^3+c^3-3abc \) の因数分解がわからない、という質問は結構あります。
ちょっとした工夫は必要ですが、使う道具は3乗の対称式と3乗の因数分解だけです。
それでは早速見ていきましょう!
※まず始めに準備として、2つの式を導きます。理解できている方は飛ばしても大丈夫です。
準備1 \( A^3+B^3=(A+B)^3-3AB(A+B) \)の証明
まずは\( A^3+B^3=(A+B)^3-3AB(A+B) \) を導きます。
右辺を展開して、左辺と等しいことを示してもよいですが、次の方法が自然です。
左辺には\( A^3\) と\( B^3 \) があるので、まずは
\[ A^3+B^3=(A+B)^3 \cdots ①\]
としてしまいます。ただし、上の式は左辺と右辺が等しくないので調整しましょう。
①式の右辺を展開すると
\begin{align}
(A+B)^3&=A^3+3A^2B+3AB^2+B^3\\
&=A^3+B^3+3AB(A+B)
\end{align}
ですので、\( 3AB(A+B) \) の部分だけ余分に出てきてしまっています。
したがって、①の右辺から\( 3AB(A+B) \) を引いて
\[ A^3+B^3=(A+B)^3-3AB(A+B) \]
とすれば、準備1の式を導くことができます!
準備2 \( A^3+B^3=(A+B)(A^2-AB+B^2) \)
3乗の因数分解の公式です。
この式も右辺を展開すれば左辺を導くことができます。
ただし、せっかくなので準備1の式を用いて、この式を導いてみたいと思います。
\begin{align}
&A^3+B^3\\
&=(A+B)^3-3AB(A+B) \\
&=(A+B)\{ (A+B)^2-3AB \} \\
&=(A+B)(A^2+2AB+B^2-3AB)\\
&=(A+B)(A^2-AB+B^2)
\end{align}
と導くことができました!3行目では共通因数\( (A+B)\) をくくり出しています。
教科書では「右辺を展開して左辺に等しい」としていますが、やや天下り的だと感じませんか?
この方が自然だと思います!
\( a^3+b^3+c^2-3abc \) の因数分解【証明】
ではいよいよ
\[ a^3+b^3+c^2-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\]
の証明です。
「右辺を展開すれば左辺に等しい」とすれば証明できますが、なぜ右辺の式が出てくるのかが分かりません。
そこで、次のようにします。
まずは準備1の式\( A^3+B^3=(A+B)^3-3AB(A+B) \)を使います。
\( a^3+b^3=(a+b)^3-3ab(a+b) \) とした後、共通因数\( -3abc \) を取り出してみましょう。
\begin{align}
&a^3+b^3+c^3-3abc\\
&=(a+b)^3-3ab(a+b)+c^3-3abc \\
&=(a+b)^3+c^3-3ab\{ (a+b)+c\} \\
&=(a+b)^3+c^3-3ab(a+b+c)
\end{align}
次に\( a+b=A,\; c=B \) とおいて、準備2の公式\( A^3+B^3=(A+B)(A^2-AB+B^2)\)を使い、その後、共通因数\( (a+b+c) \) を取り出します。
\begin{align}
&(a+b)^3+c^3-3ab(a+b+c)\\
&=\{ (a+b)+c \} \{ (a+b)^2-(a+b)c+c^2\} \\
&\; \quad -3ab(a+b+c) \\
&=(a+b+c)(a^2+2ab+b^2-ca+bc+c^2)\\
&\; \quad -3ab(a+b+c) \\
&=(a+b+c)(a^2+2ab+b^2-ca+bc+c^2-3ab)\\
&=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\\
\end{align}
これで
\[ a^3+b^3+c^2-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\]
を導くことができました!
結構大変でしたね。
\( a^3+b^3+c^2-3abc\) の因数分解を利用した練習問題
それではこの因数分解はどんな役に立つのでしょうか?
一例としての計算問題を3題ご紹介します。
問題1 \( x^3+y^3-3xy+1 \) を因数分解せよ.
まずは今回使う式をもう一度示しておきます。
\[ a^3+b^3+c^2-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\cdots (A)\]
問題1の左辺は
\[ x^3+y^3+1^3-3\cdot x \cdot y \cdot 1 \]
とかき直すことができますが、これは\( (A) \) の式の左辺の\( a,\; b,\; c \) を
\( a=x,\; b=y,\; c=1 \) としたものです。
したがって\( (A) \) の式に\( a=x,\; b=y,\; c=1 \) を代入すれば、この問題の因数分解した答えが求まります。
\begin{align}
&x^3+y^3-3xy+1\\
&=x^3+y^3+1^3-3\cdot x \cdot y \cdot 1\\
&=(x+y+1)(x^2+y^2+1^2-x\cdot y-y\cdot 1 -1\cdot x)\\
&=(x+y+1)(x^2+y^2-xy-x-y+1)
\end{align}
このようにして因数分解の答えを導くことができました。
問題2 \( x^3-6xy-8y^3-1 \) を因数分解せよ.
問題1の類題です。負の数がいくつか入ってきていますが、同じように考えていきましょう。
もう一度、因数分解公式をのせておきます。
\[ a^3+b^3+c^2-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\cdots (A)\]
問題2の左辺は
\[ x^3+(-2y)^3+(-1)^3-3\cdot x \cdot (-2y) \cdot (-1) \]
とかき直すことができますが、これは\( (A) \) の式の左辺の\( a,\; b,\; c \) を
\( a=x,\; b=-2y,\; c=-1 \) としたものです。
したがって\( (A) \) の式に\( a=x,\; b=-2y,\; c=-1 \) を代入すれば、この問題の因数分解した答えが求まります。
\begin{align}
&x^3-6xy-8y^3-1\\
&=x^3+(-2y)^3+(-1)^3-3\cdot x \cdot (-2y) \cdot (-1)\\
&=\{ x+(-2y)+(-1)\} \times \\
&\{ x^2+(-2y)^2+(-1)^2-x\cdot (-2y)-(-2y)\cdot (-1) -(-1)\cdot x\} \\
&=(x-2y-1)(x^2+4y^2+1+2xy-2y+x)\\
&=(x-2y-1)(x^2+4y^2+2xy+x-2y+1)
\end{align}
このようにして因数分解の答えを導くことができました。
問題3 \( (x-y)^3+(y-z)^3+(z-x)^3 \) を因数分解せよ.
この問題の式にはカッコの3乗が3つあるので
準備として
\[ a^3+b^3+c^2-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\]
の\( -3abc \) を移項して左辺を\( a^3+b^3+c^3 \) にしておきます。
\[ a^3+b^3+c^2=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)+3abc\cdots (B)\]
この式において\( a=x-y,\; b=y-z,\; c=z-x \) を代入すれば、左辺は問題文の式と同じになりますので、因数分解が完成します。
ただし、右辺の式が長くなるので、先に\( a+b+c \) を計算しておきます。
\begin{align}
a+b+c&=(x-y)+(y-z)+(z-x)\\
&=x-y+y-z+z-x\\
&=0
\end{align}
となりました!したがって、公式\( (B) \) 右辺の前半部分は0で消えてしまいます。つまり
\[ a^3+b^3+c^2=3abc \]
になるわけです。このことを頭に置きながら、公式\( (A) \) に
\( a=x-y,\; b=y-z,\; c=z-x \) を代入すると
\[ (x-y)^3+(y-z)^3+(z-x)^3=(x-y)(y-z)(z-x) \]
となり、簡単に因数分解することができました!
まとめ
今回は\( a^3+b^3+c^3-3abc \) の因数分解とその利用方法について解説しました。
コツは準備1,準備2で示した2つの式を順番に使うことです。
これだけの工夫で、こんなに複雑な因数分解が完成できるのは感動がありますよね。
3乗の因数分解公式を利用すると、複雑な因数分解の問題も、簡単にかつ鮮やかに解くことができました!
今回は以上です。
最後までお疲れさまでした。