数学

【入試頻出】チェビシェフ多項式と過去問の解説【漸化式を導いて証明します】

入試問題の解説を読んでいたら、チェビシェフ多項式という式が出てきた。チェビシェフ多項式ってどんな多項式なの?

チェビシェフ多項式が背景になっている入試問題はどんな感じなの?チェビシェフ多項式の漸化式や証明方法も知りたい。

このような悩みを解決します。

✔︎本記事の内容

1.チェビシェフ多項式について、分かりやすく解説します。

2.チェビシェフ多項式の漸化式を導き、証明をします。

3.チェビシェフ多項式が背景になっている大学入試問題を解説します。

ちなみにこの記事を書いている私の経歴は以下の通りです。

  • 数学講師歴20年以上
  • 大学院の修士課程終了(専門は情報幾何学)
  • 数学検定1級取得

 

チェビシェフ多項式は難しいものではありません。

任意の自然数nに対して

\(\; \cos n\theta \; \)は\(\; \cos \theta \; \)の\(\; n\; \)次多項式で表すことができる

という性質があり、ここで現れる多項式がチェビシェフ多項式と呼ばれるものです。

とても興味深い多項式で、証明も簡単でできます。

チェビシェフ多項式は高校の教科書では取り上げられませんが、大学入試問題でしばしば登場しますので、きちんと理解しておくことをおすすめします。

関連する入試問題は似た問題が多く、例えば、今回取り上げた慶應大学の問題と信州大学の問題はそっくりです。ぜひ手を動かして解き比べてみてください。

本記事の内容を参考にして、チェビシェフ多項式について一緒に学んでいきましょう。

1.チェビシェフ多項式とは

チェビシェフ多項式は、次で定理で現れる多項式です。

定理1
\(\; \cos n\theta \; \)は\(\; \cos \theta \; \)の\(\; n\; \)次式で表せる

例を挙げてみます。

\begin{align*}
&\cos 2\theta =2\cos ^2\theta -1 \\
&\cos 3\theta =4\cos ^3\theta -3\cos \theta \\
&\cos 4\theta =8\cos ^4\theta -8\cos ^2\theta +1 \\
&\cos 5\theta =16\cos ^5\theta -20\cos ^3 \theta +5\cos \theta
\end{align*}

見ていただくと分かるように、右辺はすべて\( \cos \theta \)の多項式となっています。

ここで\(x=\cos \theta \)とおき,\(x\)の\(n\)次多項式を\(T_n(x)\)で表すと、上の式は次のように表すことができます。

\begin{align*}
&T_2(x)=2x^2-1 \\
&T_3(x)=4x^3-3x \\
&T_4(x)=8x^4-8x^2+1 \\
&T_5(x)=16x^5-20x^3+5x \\
\end{align*}

この\(T_n(x)\)をチェビシェフ多項式と呼びます。

※厳密には\(T_n(x)\)は第一種チェビシェフ多項式と呼ばれているものです。第二種チェビシェフ多項式については別の機会に取り上げたいと思います。

2.チェビシェフ多項式の漸化式

それではチェビシェフ多項式\(T_n(x)\)の漸化式を作り、定理1を証明する準備をします。

チェビシェフ多項式の漸化式は、和積の公式を用いて\(\cos (n+2)\theta +\cos n \theta\)を計算することで作ることができます。

和積の公式
\[ \cos A+\cos B=2\cos \cfrac{A+B}{2} \cos \cfrac{A-B}{2} \]

\begin{align*}
&\cos (n+2)\theta +\cos n \theta \\
&=2\cos \dfrac{(n+2)\theta +n\theta }{2}\cos \dfrac{(n+2)\theta -n\theta }{2}\\
&=2\cos \dfrac{(2n+2)\theta }{2}\cos \dfrac{2\theta }{2}\\
&=2\cos (n+1)\theta \cos \theta \cdots ①
\end{align*}

これより
\[ T_{n+2}(x)+T_n(x)=2T_{n+1}(x)\cdot x\]

\[∴T_{n+2}(x)=2xT_{n+1}(x)-T_n(x)\]

この式が、チェビシェフ多項式の漸化式です。

3.定理1の証明

続いて定理1の証明をします。

定理1
\(\cos n \theta \; \)は\(\; \cos \theta \; \)の\(\; n\; \)次式で表せる・・・(A)

 

先ほど導いた漸化式

\[ \cos (n+2)\theta +\cos n \theta =2\cos (n+1)\theta \cos \theta \; \cdots \; ① \]

を利用して証明をします。

【証明】

数学的帰納法で示す。

(i)\(n=1\)のとき\(\cos \theta =\cos \theta \)であるから成立する。
\(n=2\)のとき\(\cos 2\theta =2\cos ^2\theta -1\)となり成立する。

(ii)\(n,\; n+1\)のときに(A)が成り立つと仮定すると、漸化式①より、\(n+2\)のときも成り立つ。

(i)(ii)から数学的帰納法により成り立つ。

証明終

4.チェビシェフ多項式に関する入試問題

それでは、チェビシェフ多項式が背景になっている過去問をみていきましょう。

2017 埼玉大

次の問いに答えよ。
(1) \(n\)を自然数とする。三角関数の加法定理を用いて,等式
\(\cos (n+2)\theta +\cos n \theta = 2\cos (n+1)\theta \cos \theta \)
を導け。

(2) \(\cos 2\theta =T_2(\cos \theta ),\; \cos 3\theta =T_3(\cos \theta )\)を満たす整式\(T_2(x)\),\(\; T_3(x)\)をそれぞれ求めよ。

(3) 自然数\(n\)に対し,\(\cos n\theta =T_n(\cos \theta )\)を満たす整数係数の\(n\)次の整式
\(T_n(x)\)が存在することを示せ。

(4) 自然数\(k\)に対し,\(\cos \dfrac{\pi}{4k}\)は無理数であることを示せ。ただし,\(\sqrt{2}\)が
無理数であることは証明なしに用いてよい。

(1)〜(3)の解き方は、本記事で扱ったチェビシェフ多項式の解説とほとんど同じです。

解答
(1)チェビシェフ多項式の漸化式を導く問題です。

先ほどのように、和積の公式を使えば簡単に解けますが、問題文に「三角関数の加法定理を用いて」と書かれているので、ひと工夫しなければなりません。
\begin{align*}
&\cos (n+2)\theta +\cos n \theta \\
&=\cos \{ (n+1)\theta +\theta \} +\cos \{ (n+1)\theta -\theta \} \\
&=\cos (n+1)\theta \cos \theta -\sin (n+1)\theta \sin \theta \\
& +\cos (n+1)\theta \cos \theta +\sin (n+1)\theta \sin \theta \\
&= 2\cos (n+1)\theta \cos \theta
\end{align*}

よって\(\cos (n+2)\theta +\cos n \theta = 2\cos (n+1)\theta \cos \theta \)が導かれました。

(2) \(\cos 2\theta =2\cos ^2\theta -1\)より\(T_2(x)=2x^2-1\)

また,(1)で\(n=1\)として
\( \cos 3\theta +\cos \theta =2\cos \theta \cos 2\theta \)
\begin{align*}
∴\cos 3\theta &=2\cos \theta (2\cos^2\theta -1)-\cos\theta \\
&=4\cos ^3\theta -3\cos \theta
\end{align*}
これより\(T_3(x)=4x^3-3x\)

(3)数学的帰納法で示す。
(i)\(n=1\)のとき\(T_1(x)=x,\)
\(n=2\)のとき\(T_2(x)=2x^2-1\)(∵(2)より)
これより\(T_n(x)\)が存在する。

(ii)\(k\)を自然数とし、\(n=k,\; n=k+1\)のとき\(T_k(x),\; T_{k+1}(x)\)が存在すると仮定する。

(1)より

\(\cos (k+2)\theta +\cos k\theta =2\cos \theta \cos (k+1)\theta \)

であるから

\begin{align*}
&T_{k+1}(x)+T_k(x)=2xT_{k+1}(x)\\
& ∴T_{k+1}(x)=2xT_{k+1}(x)-T_k(x)・・・①
\end{align*}
仮定より\(T_k(x),\; T_{k+1}(x)\)が存在するので
①より\(T_{k+2}(x)\)は整数係数の多項式となる。
すなわち\(T_{k+2}(x)\)が存在する。

(i)(ii)より、すべての自然数\(n\)について\(T_n(x)\)が存在する。

(3)背理法で示す。
\(\theta =\dfrac{\pi}{4k}\)とおき,\(\cos \theta \)が有理数であると仮定する。

\(\cos k \theta =T_k(\cos \theta )\)は、整数係数の\(k\)次式に、有理数である\(\cos \theta \)
を代入したものなので、有理数である。

一方、\(k\theta =\dfrac{\pi}{4}\)から、\(\cos k\theta =\cos \dfrac{\pi}{4}=\dfrac{\sqrt{2}}{2}\)であり、
\(\sqrt{2}\)が無理数なので\(\cos k\theta \)は無理数となり矛盾する。

したがって、\(\cos \theta \)は無理数である。

 

 

2008 慶応大学

\(x\)の多項式\(f_n(x)\; (n=0,\; 1,\; \cdots )\)を

\(f_0(x)=1,\; f_1(x)=x,\;\)
\(f_{n+1}(x)=2xf_n(x)-f_{n-1}(x)\cdots ① \; (n=1,\; 2,\; \cdots )\)
により順に定める。

(1)\(f_5(x)\)を具体的に求めると\(f_5(x)=\boxed{  }\)であり,方程式\(f_5(x)=0\)を解くと\(x=\boxed{  }\)である。

(2)\(n=1,\; 2,\; \cdots \)に対して\(f_n(\cos \theta )=\cos n\theta \)であることを示しなさい。

(3) (1)と(2)を用いて\(\cos \cfrac{\pi}{10}\)の値を求めると\(\boxed{  }\)である。

解答
(1)前半
\begin{align*}
f_2(x)&=2xf_1(x)-f_0(x)\\
&=2x\cdot x-1\\
&=2x^2-1
\end{align*}

\begin{align*}
f_3(x)&=2xf_2(x)-f_1(x)\\
&=2x(2x^2-1)-x\\
&=4x^3-3x
\end{align*}

\begin{align*}
f_4(x)&=2xf_3(x)-f_2(x)\\
&=2x(4x^3-3x)-(2x^2-1)\\
&=8x^4-8x^2+1
\end{align*}

\begin{align*}
f_5(x)&=2xf_4(x)-f_3(x)\\
&=2x(4x^3-3x)-(8x^4-8x^2+1)\\
&=16x^5-20x^3+5x
\end{align*}

(1)後半
\begin{align*}
16x^5-20x^3+5x=0\\
x(16x^4-20x^2+5)=0\\
%x=0,\; x^2=\cfrac{10\pm\sqrt{100-80}}{16}\\
x=0,\; x^2=\cfrac{10\pm2\sqrt{5}}{16}\\
∴x=0,\; \cfrac{\sqrt{10\pm2\sqrt{5}}}{4}\\
\end{align*}

(2)数学的帰納法で示す。
(i)\(n=1\)のとき\(f_1(x)=x\)より
\(f_1(\cos \theta )=\cos \theta \)で成立

\(n=2\)のとき\(f_2(x)=2x^2-1\)より
\(
f_2(\cos\theta )=2\cos ^2\theta -1\\
=\cos 2\theta
\)で成立

(ii)\(k=0,\; 1,\; 2,\; \cdots \)として,\(n=k,\; n=k+1\)のとき成り立つと仮定する
①で\(n=k,\; x=\cos\theta \)として
\begin{align*}
f_{k+2}(\cos\theta )&=2\cos\theta f_{k+1}(\cos\theta )-f_k(\cos\theta )\\
&=2 \cos (k+1)\theta \cos\theta-\cos \theta\\
&=2\cdot \cfrac{1}{2}\{ \cos (k+2)\theta +\cos k\theta \} -\cos k\theta \\
&= \cos (k+2)\theta +\cos k\theta -\cos k\theta \\
&=\cos (k+2)\theta
\end{align*}
となり成り立つ。

(i)(ii)より,すべての自然数で\(f_n(\cos\theta )=\cos n\theta\)
が成り立つ。

(3)
(2)より
\[ f_5(\cos\theta )=\cos 5\theta \]

(1)より
\[ f_5(\cos\theta )=16\cos^5\theta -20\cos^3\theta +5\cos \theta \]

であるから

\[\cos 5\theta =16\cos^5\theta -20\cos^3\theta +5\cos \theta ・・・②\]

ここで\(\theta =\cfrac{\pi}{10}\)とおくと

\(\cos 5\theta =\cos \dfrac{\pi}{2}=0\)となるので,②より

\[16\cos^5\theta -20\cos^3\theta +5\cos \theta =0\]

この式から,\(\cos \dfrac{\pi}{10}\)は\(16x^5-20x^3+5x=0\)の解である。

(1)の結果より
\(\cos \dfrac{\pi}{10}\; \)は\(\; x=0\; ,\; \cfrac{\sqrt{10\pm2\sqrt{5}}}{4}\)のいずれかである。

\(\dfrac{\pi}{10}\)に近い角\(\dfrac{\pi}{6}\)と比較すると

\begin{align*}
&\cos \dfrac{\pi}{6}<\cos \dfrac{\pi}{10}<\cos 0 \\
&\Leftrightarrow \dfrac{\sqrt{3}}{2}<\cos \dfrac{\pi}{10}<1\\
&\Leftrightarrow \dfrac{\sqrt{12}}{4}<\cos \dfrac{\pi}{10}<\dfrac{\sqrt{16}}{4}\\
\end{align*}

\(\sqrt{5}≒2.2\)より

\[ \cos \dfrac{\pi}{10}=\cfrac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4} \]

これで求まりました。

※厳密には\(2<\sqrt{5}<3\)を利用します。

 

 

最後に、埼玉大と慶応大の問題に似た問題を見つけましたのでご紹介します。

2019年 信州大

\(n\)を自然数,\(\theta \)を実数とするとき,次の問いに答えよ。

(1) 次の等式を示せ。
\[ \cos (n+2)\theta -2\cos \theta \cos (n+1)\theta +\cos n\theta \]

(2) \(\cos \theta =x\)とおくとき,\(\cos 5\theta \)を\(x\)の式で表せ。

(3) \(\cos ^2 \dfrac{\pi}{10}\)の値を求めよ。

解答

解答は省略しますが、(1)は2017年埼玉大と同じ。

(2)(3)は2008年慶応大とほぼ同じです。

(2)の答えは\(\cos 5\theta =16x^5-20x^3+5x\)です。

(3)は次のようになります。
\begin{align*}
\cos ^2 \dfrac{\pi}{10}&=\left( \dfrac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4}\right)^2\\
&=\dfrac{10+2\sqrt{2}}{16}\\
&=\dfrac{5+\sqrt{5}}{8}
\end{align*}

まとめ

今回は、チェビシェフ多項式(第一種)と関連する入試問題について解説しました。

任意の自然数nに対して,\(\cos n\theta \)は\(\cos \theta \)の\(n\)次多項式で表され、ここで現れる多項式が,チェビシェフ多項式と呼ばれるものです。

チェビシェフ多項式が背景となっている大学入試問題はしばしば出題され、それらは似た問題が多いのが特徴です。これらの問題については、チェビシェフ多項式の基本をきちんと押さえておくことで、余裕を持って問題に取り組めると思います。

チェビシェフ多項式のように、一つの定理が背景となっている様々な入試問題に取り組んでみるのは楽しいものです。出題者は何を背景にして、どんな切り口で問題を作っているのかを探っていくのです。

自分自身の興味関心の輪を広げていくことで、記憶にも残りやすくなります。

チェビシェフ多項式に関連するもんだは他にもたくさんありますので、ぜひ研究してみてください。

今回は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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