・説明をするのが苦手
・分かりやすく簡潔に話せるようになりたい
・信頼を得られるような話し方を勉強したい
そんな悩みに答えてくれるのが本書『説明がうまい人はやっている「数学的」話し方トレーニング』です。
著者はビジネス数学教育家として活動されている深沢真太郎さん。
ビジネス数学といっても難しい数式は一切でてこないのでご安心ください。
本書は「論理的で分かりやすい話し方のトレーニング法」について書かれた本です。
話し方を数学的にすることで、分かりやすく、説得力生まれ、ビジネスの現場でも評価されるようになります。
ちなみに表紙の帯にある問題
「当社の年商は1億円です」この言葉に決定的に欠けていることは?
は興味を引きますよね。本書を読めばその解答におもわず納得してしまうと思います!
それでは本書の要点と私の気づきをご紹介していきます。
話し方を変えることで人生を変えることができる
「話し方」を変えることで人生を変えることができる。
これが本書の一貫した主張です。
・わかりやすく簡潔に説明ができれば仕事がスムーズに進みます。
・論理的に伝えることができれば説得力が生まれます。
・話し方が数学的に筋道のきちんとしたものであれば、ビジネスの現場で評価され、信頼を得ることができます。
そして、このような「話し方」を決めるのは「思考」です。
だから「話し方」を変えていくために、まずは「思考」を変える。
「思考」を「数学的思考」に変えていくことが大切です。
本書では「数学的思考」を「次の5つを組み合わせて物事を考えること」と定義しています。
- 定義
- 分解
- 比較
- 構造化
- モデル化
この5つを組み合わせて物事を考えることで「思考」が変わり、「話し方」が変わります。
本書には5つのポイントが以下のような数式で表現さます。
◎数学的思考=定義×(分解+比較)×(構造化+モデル化)
かけ算で表されているのでどの5つの要素も重要ですね。
1.定義
まずは「定義」です。
定義には「言葉の定義」と「場の定義」があります。
「言葉の定義」
これから話そうとする言葉、相手が知らない可能性のある言葉を定義する。
つまり、言葉の説明をきちんとすることが重要です。
「アンカリング」「プロスペクト理論」など相手が知らない可能性があるならば、きちんと説明しておく必要があるのは当然です。
知らない言葉を、知っている前提で話しても全く話は伝わりませんよね。
「場の定義」
「言葉の定義」の他に本書では「場の定義」が重視されます。
本書では「場の定義」として「時間」「前提」「目的」の3つの要素が紹介されています。
時間・・・話の要する時間を伝える
これから話をする相手に対して、この話はどのくらいの「時間」を要するのかを伝えます。
例えば「今から5分程度いただきますが」「少しばかりながくなりますが」など話をする時間を相手に伝えることが重要です。
相手は話の要する時間が分かることで、時間という意味で話の全体を把握でき、安心して話を聞くことができます。
前提・・・この話は~という前提で展開される、という内容を伝える
これから話す内容の「前提」を伝えます。
例えばサッカー解説の話なら、それは映像を見ながらなのか、実際に競技場で観戦をした話なのか、など話の前提となる事柄について相手に伝えてから話を始めます。
どんな前提での話なのかを聞き手が理解することで、話が伝わりやすくなります。
他の例として次のような前提もあります。
「もっと頑張って」というメッセージを話す際、「いままでよく頑張ってきた」のでもっと頑張って(エール)なのか、正直物足りないのでもっと頑張って(ダメ出し)なのか。
事前にこのような前提を話しておくことで、微妙なニュアンスもきちんと相手に伝わります。
③目的・・・この話の目的。なんの目的で話をするのか
この話の「目的」を伝えます。
「○○さん、情報共有です」
「○○さん、相談です」
「○○さん、承認してもらいたいことがあります」
という具合に、話の目的を伝えてから話を始めることで、聞き手は話の全体像をまずつかむことがかのうになります。
まずはこの話が何の目的があるのかから話す。これは重要ですね。
2.分解
続いて話を「分解」することについてです。
数学の因数分解を例にして解説されていて共感できました。
分かりやすく話す人の共通点は、話す前にその内容を分解しています。
ルネ・デカルトは
「難しい問題は、小さく分けて考えなさい」
という言葉を残したそうです。
これを話し方に言い換えると、「難しい伝達は、小さく分けて伝えなさい」ということになります。
例えば次のように、伝える内容を分解して小さくわけていきます。
・「○○、△△、□□の3つがあります。さらに、□□は◆、◇、■の3つの要素に分けることができます」
・「ポイントは2つあります」
・「前提、分析、結論という3つの順で説明していきます」
コツは図解することです。
わかりやすく伝わる内容は、図解することができ、それは必ず「塊」と「矢印」で表現できるのだそうです。
3.比較
話をする際の3つ目のポイントは「比較」です。
例えば
「いまうちの会社の年商は1億円です」
だけだと「だから何?」となってしまいます。
ところが
「いまうちの会社の年商は1億円と好調です」
と「比較」の内容を入れることで、1億円の意味づけがなされます。
1億円にメッセージが込められるのです。
比較とは引き算であり、何かとの差です。
例「この麻婆豆腐、美味しい!」
→「この麻婆豆腐、いままで食べたものの中で一番美味しい!」
とすれば意味が正しく伝わりますね。
有識者は「いま」と「これから」という時間軸での比較を使うことが多いそうです。
複数の比較を使うことも有効です。
数学で登場する「10<x<15」のような不等式をイメージすると理解しやすいです。
例「あの高卒ルーキーのサッカー選手は、良い選手だと思う」
→「あの高卒ルーキーのサッカー選手は、近年では頭抜けている。しかし世界基準で比較したら、いまはまだまだ普通の選手という評価になる。でも期待はできる。頑張ってほしい。」
「頭抜けているけれど世界基準だとまだまだ」というふうに比較することでより具体的に選手の様子が伝わります。
「比較の存在しない会話はビジネスの会話でなくただの遊びである」
という言葉が印象に残りました!
4.構造化
4つ目は「構造化」です。
話をする内容がどういう構造なのかを伝えることです。
その際、同じ構造の別物で話すことが有効です。
聞き手が身近に感じている、あるいは理解できる同じ構造の例を提示して話を進めていきます。
要するに「たとえ話」をすること。
例「ビジネスにおいて市場や競合などを分析せず闇雲に施策を乱発することは、暗闇でボクシングをするようなもの」
「分析せずに闇雲に施策を乱発」と「暗闇でボクシングをする」
が同じ構造であることをうまく利用した話し方になっています!
また次の構造的話法は説得力のある話し方をするさい非常に有効だと感じました。
構造的話法・・・構造的に同じものをたとえとして用意し、それを連続して話すことでその主張に説得力が生まれる。
構造化をまとめると以下のようになります。
Aという説明をする
↓
Bという説明をする
↓
AとBは同じ構造であることを述べる
↓
Aの内容に説得力が生まれる
5.モデル化
最後は「モデル化」です。
要するによく知られているモデルにあてはめて話すということです。
数学の「公式にあてはめて説明する」イメージですね。
モデルとは「~はこういう性質(法則)がある」と言語化されたもので、本書では次のような例が挙げられています。
説明に使える「モデル」の例
- パレート(2:8)の法則
- 2-6-2の法則
- ランチェスターの法則
- 10000時間の法則
- ピーク・エンドの法則
- 限界効用逓減の法則
ビジネス書でよく取り上げられている例ですね。
こういった有名なモデルにあてはめて説明をすることで、より説得力のある話し方が可能になります。
まとめ
本書の主張である
「話し方」を変えることで人生を変えることができる。
この意識を持つことは重要です。
わかりやすく説得力のある話し方、伝え方ができれば、ビジネスに限らずあらゆる場面で信頼を得ることができるからです。
本書では「わかりやすくより説得力のある伝え方」をするための5つのポイントを数学と関連付けて丁寧に解説されています。
ポイントは
- 定義
- 分解
- 比較
- 構造化
- モデル化
の5つを意識して思考を変えていくことでした。
本書には練習問題もたくさん用意されていますので、話し方のよいトレーニングになると思います。
私はこの5つのポイントを意識しながら、自然に使いこなせるように「話し方」のトレーニングをしていきたいと思いました。
『数学的「話し方」トレーニング』おすすめです!