今回は,ローンの計算でよく使われる次の式を,2通りの方法で導いてみます.
\begin{equation}
\fbox{$
\begin{aligned}[t]
毎月の返済額 =\frac{借入金額\times 利率\times (1+利率)^{返済回数}}{(1+利率)^{返済回数}-1}
\end{aligned}$}
\end{equation}
※「利率」は月利です.年利を12で割ったものを用います.
※「返済回数」は返済が終了するまでの月数で,たとえば10年返済の場合120か月となります.
【証明1】は分かりやすい方法ですが、やや長くなります
【証明2】はスパッと答えを導けますが、考え方が少し難しめとなります。
どちらも、高校までの知識で導けますので、是非チャレンジしてみてください。
ローン毎月返済額の式【証明1】
説明をスッキリさせるために,次の記号を使います.
\begin{align*}
& L:借入金額\\
& x :毎月の返済額\\
& r:利率(月利)\\
& n:返済回数(返済月数)\\
& R=1+rとおきます.
\end{align*}
まず最初に\( L \)円を借ります.これ以降「円」は省略します.
1か月後に,この\( L \)に利子がつき
\[ L\times (1+r)=LR \]
となりますが、このタイミングで\( x \) を返済しますので
\[ (1か月後の残高)=LR-x \]
となります.
2ヶ月後は,この\( LR-x\)に利子がつきますので
\begin{align*}
(LR-x)\times (1+r)&=(LR-x)\times R\\
&=LR^2-xR
\end{align*}
となりまが、先ほどと同様\( x\) を返済しますので
\[ (2か月後の残高)=LR^2-xR-x\]
となります.
この作業を繰り返していきます.
\begin{align*}
(1か月後の残高)&=LR-x \\
(2か月後の残高)&=(LR-x)R-x\\
&=LR^2-xR-x\\
(3か月後の残高)&=(LR^2-xR-x)R-x\\
&=LR^3-xR^2-xR-x\\
(4か月後の残高)&=(LR^3-xR^2-xR)R-x\\
&=LR^4-xR^3-xR^2-xR-x\\
&\cdots \\
(nか月後の残高)&=LR^n-xR^{n-1}-xR^{n-2}-\cdots -xR^3-xR^2-xR-x\\
&=LR^n-(1+R+R^2+R^3+\cdots +R^{n-1})x
\end{align*}
ここで\( 1+R+R^2+R^3+\cdots +R^{n-1}\) は,初項1,公比\( R\) ,項数\( n\) の等比数列の和なので,
\begin{aligned}[t]
初項a,公比r,&項数nである等比数列の和S_nの公式\\
S_n&=\frac{a(r^n-1)}{r-1}
\end{aligned}
を用いて
\[ 1+R+R^2+R^3+\cdots +R^{n-1}=\frac{R^n-1}{R-1} \]
となります.したがって
\begin{align*}
(nか月後の残高)&=LR^n-\frac{R^n-1}{R-1}x \tag{$*$}
\end{align*}
となりました.ここで,\( n\) か月後の残高は\( 0\) になるはずなので,\( (*)=0 \) とします.
\begin{align*}
&&LR^n-\frac{R^n-1}{R-1}x =0
%&&LR^n=\frac{R^n-1}{R-1}x
\end{align*}
これを\( x\) について解き、\( R=1+r\) に戻すと
\begin{eqnarray*}
x&=&\frac{LR^n(R-1)}{R^n-1}\\
&=&\frac{L(r+1)^n(r+1-1)}{(1+r)^n-1}\\
&=&\frac{Lr(r+1)^n}{(1+r)^n-1}
\end{eqnarray*}
となります.
この式を言葉で表現すると,次の式が求まります!
\begin{align*}
毎月の返済額 &=\frac{借入金額\times 利率\times (1+利率)^{返済回数}}{(1+利率)^{返済回数}-1}
\end{align*}
ローン毎月返済額の式【証明2】
先ほどと同様,次の記号を使います.
\begin{align*}
& L:借入金額\\
& x :毎月の返済額\\
& r:利率(月利)\\
& n:返済回数(返済月数)\\
& R=1+rとおきます.
\end{align*}
「借入金額\( L\) を\( n\) ヶ月間ずっと借りていた場合の総額」と「返済する金額を月利\( r\) で貯金した総額」とが等しくなることを用います.
借入金額\( L\) を\( n\) ヶ月間ずっと借りたときの総額
\begin{align*}
&1か月後は L\times R=LR\\
&2ヶ月後は LR\times R=LR^2\\
&3ヶ月後は LR^2\times R=LR^3\\
&\cdots \\
&nヶ月後は LR^n \tag{A}
\end{align*}
返済する金額を月利\( r\) で貯金したときの総額
\begin{align*}
(1ヶ月後の貯金額)&=x\\
(2か月後の貯金額)&=xR+x\\
&=(1+R)x\\
(3か月後の貯金額)&=(xR+x)R+x\\
&=xR^2+xR+x\\
&=(1+R+R^2)x\\
(4か月後の貯金額)&=(xR^2+xR+x)R+x\\
&=xR^3+xR^2+xR+x\\
&=(1+R+R^2+R^3)x\\
&\cdots \\
(nか月後の貯金額)&=(1+R+R^2+R^3+\cdots +R^{n-1})x\\
&=\frac{R^n-1}{R-1}x \tag{B}
\end{align*}
\begin{align*}
(A)と(B)が等しくなるので\\
&LR^n=\frac{R^n-1}{R-1}x\\
これをxについて解き,R=1+rに戻すと\\
x&=\frac{LR^n(R-1)}{R^n-1}\\
x&=\frac{L(r+1)^n(r+1-1)}{(1+r)^n-1}\\
&=\frac{Lr(r+1)^n}{(1+r)^n-1}
\end{align*}
この式を,言葉で表現すると,次の式が求まります.
\begin{align*}
毎月の返済額 &=\frac{借入金額\times 利率\times (1+利率)^{返済回数}}{(1+利率)^{返済回数}-1}
\end{align*}
まとめ
今回は,ローンを組んだ際の、「毎月の返済額」の計算方法について、2通りの方法で証明をしてみました。
今回の記事は「Mathjax-LaTeX」を用いて書いてみました。TeXには慣れているつもりでしたが、思った以上に苦労し時間もかかってしまいました。今後もできるだけ数学に関する記事を書いて、もっとMathjaxに慣れていきたいと思います。
高校数学の知識がローンという身近なところで使われているということを実感していただけたら嬉しいです。