2019年10月、数学検定1級に合格することができました。今後は「数学検定1級」の勉強法やおすすめのテキストについてご紹介していきます。
今回のご紹介する問題集は、日本数学検定協会監修の「合格ナビ!数学検定1級1次 線形代数」です。著者は中央ゼミナール、一橋学院講師の江川博康さん。
このシリーズは、数検1級の1次にターゲットを絞り、「線形代数編」と「解析・確率統計編」の2冊が出版されています。
数学検定1級の1次検定を突破するために、是非取り組んでほしい問題集の1つです。
私が最も時間をかけて取り組んだ「数学検定1級 準拠テキスト」との違いや、レベル、私の取り組みのペース、などについてご紹介していきます。
それでは、「全体の構成」からみていきます。
全体の構成
第0章が「整数」(12ページ)で、残りははすべて「線形代数」です。線形代数は第1章から第6章まであり、通常の流れで解説されています。
付録として、巻末に過去問題(1次・2次)が掲載されています。これは非常にありがたいです!
各節は「Step1重要事項」「Step2基本例題」で構成されており、各章の終わりに「Step3過去問題」が1~2問、用意されています。ここでの過去問題は1次検定のものです。
内容について
1次検定で出題される基本的な内容はほぼ網羅されています。
整数
第0章に整数の内容がまとめられています。
不定方程式や合同式など項目があり、それぞれに対応した例題が1問あります。
特に「合同式」は数学検定で頻出の分野ですので、しっかりと練習しておきましょう。
行列
行列についての内容がほぼ網羅されています。
数学検定で頻出である、直線の方程式や平面の方程式についても、しっかりと例題が対応しています。
「直線の方程式」「平面の方程式」「球面の方程式」「四面体の体積」など、具体的な図形に対する問題があり、学習しやすいと感じました。
行列式
「準拠テキスト」にはない、「置換」についての問題からスタートします。
「四面体の体積と行列式」の項目が私には、目新しく感じました。
交代式を用いて行列式を求める問題もありました。定着すれば非常に効果的ですが、ややレベルが高い気がします。
連立一次方程式
「階数」に関する例題の解説は「階段行列を用いる方法」のみで、小行列を用いた方法の記載はありません。1次検定ではこれで十分なのでしょう。
内容も標準的です。
場合分けが必要な問題も、簡単すぎず、難しすぎずでちょうどよいレベルだと感じました。
第7節の「終結式」という行列式は便利そうでしたが、証明が省略されていたため、飛ばしました。
線形空間と線形写像
線形独立・線形従属については、テキストによって説明の仕方が様々です。
本書のまとめ方も分かりやすかったです。第339回検定の1次では、あるベクトルが線形従属になる条件を求める問題が出題されました。ここの例題をマスターしておけば、簡単に求まったでしょう。
線形変換では不動点や不動直線と求める問題がありました。準拠テキストにはないタイプでしたので興味深かったです。
その他、「図形に対する線形変換」や「合成変換」、「回転変換・対称変換」など、具体的な図形の式を変換する問題を扱っているのが、特徴的です。
後半はやや難しい内容になります。
固有値と行列の対角化
標準的な流れの構成ですが、後半はやや発展的な内容になっていきます。
対角化可能であるための必要十分条件については、簡単な例が一問あるだけで、具体的な問題演習はありません。1次検定には必要ないからでしょう。このあたりの練習をしたい方は、「準拠テキスト線形代数」で練習するとよいと思います。
上三角行列やジョルダン標準形まで扱っています。
しっかりと行列の対角化の練習ができます!
ややオーバースペック?な内容も
多少オーバースペックかなと思ったところが、何か所かあります。
例えば
「Pell方程式」「単射・全射・全単射」「直交補空間」「フロベニウスの定理」「スペクトル分解」「ラグランジュの方法(標準化)」「2次曲面の標準化」
などです。私は、これらの分野については、さっと流し読みする程度にとどめました。
時間が許せば、これらの分野もきちんとマスターしておくことで、合格可能性が高まるはずです。
この本の一番のお気に入り
本書は1次検定の線形代数や整数問題を確実に得点源にするためのテキストになります。線形変換では具体的な式の変換例などがあってためになります。
とても優れたテキストなのですが、私が一番気に入ったのは
・・・
巻末の過去問です!
「線形代数」関係ないじゃん!と言われそうですが、これは重宝しました。
数学検定1級を受検する場合、最近の過去問が手に入らないことが一番のネックになります。もちろん、過去問題集は販売されているのですが、やや古い。
本書の巻末の問題はおそらく、2017年のものです。
私はこれを2~3回々解きました。
この過去問が手に入るだけでも、本書を購入する価値はあるかと思います。
私の取り組み方
線形代数の学習に絞ると、私は次の順で学習しました。
「マセマシリーズ」→「準拠テキスト線形代数」→「本書」
順番としては「本書」→「準拠テキスト」だったのかもしれませんが、私はこの本の存在を後から知ったため、このような順番になりました。
「準拠テキスト」まで一通り終えた後に、次のようなペースで取り組みました。
巻末の過去問は別日程で時間をかけて取り組んでいますので、次の表からは除いています。
月 日 | 取り組んだページ | ページ数 |
5/23 | p1~10 | 10 |
5/24 | p11~44 | 34 |
5/27 | p45~67 | 23 |
5/28 | p68~80 | 13 |
5/29 | p81~98 | 18 |
5/30 | p99~114 | 16 |
5/31 | p115~130 | 16 |
6/3 | p131~142 | 12 |
6/4 | p143~156 | 14 |
6/5 | p157~163 | 7 |
6/6 | p164~169 | 6 |
6/10 | p170~195 | 26 |
6/11 | p196~205 | 10 |
6/13 | p211~219 | 9 |
取り組んだ日数だけみると14日間ですが、一番最初にこのテキストに取り組む場合はもっと時間がかかると思います。
先ほど述べた分野「Pell方程式」「単車・全射・全単射」「直行補空間」「フロベニウスの定理」「スペクトル分解」「ラグランジュの方法」「2次曲面の標準化」については、後回しにしても良いのではないかと思っています。
実際に流し読みの部分もあります。
まとめ
本書は、数学検定1級でも難関とされる1次検定に絞った問題集となっています。
私はこのテキストの存在は後から知ったため、購入が遅くなってしまいました。時間もなく、1回しかまわせませんでしたが、2回、3回と繰り返すことで、確実に計算力が付く本です。
1次向けとはいえ、やや発展的な内容の紹介もあり興味深く勉強できます。
1次検定では線形代数の範囲から2題出題されることが多いです。確実に得点源にして、合格をめざしましょう!
「合格ナビ!数学検定1級1次線形代数」おすすめです。