数学検定1級の出題範囲の中で、最も重要な分野の1つである「線形代数」。
数検1級合格のカギを握っているのが「線形代数」といっても過言ではありません。
今回の記事では、数検定1級の線形代数を効率よく、高いレベルまで上げていく方法について、解説していきます。
①「マセマの線形代数」で基礎を徹底理解
②「合格ナビ!1級1次」で計算力UP(カット可)
③「準拠テキスト」で実践力をつける
④「過去問」で合格力をつける
数学検定1級の「微分積分」や「確率統計」の対策についてはこちらをご覧ください↓
線形代数は微分積分と異なり、理解しにくい概念があります。
この概念の習得ができれば一気に合格レベルまで到達できるでしょう。
まずは、易しめのテキストから始めて、線形代数の基礎を徹底的にマスターしていきましょう。
ステップ0 線形代数に入る前に
数検1級の線形代数をマスターするためには、以下の知識が前提となります。
高校レベルの知識で十分です。
- ベクトル
- 2次曲線
- 複素数
線形代数のテキストは、高校で習う範囲の復習から進めてくれるものが多いのですが、「ベクトル」「2次曲線」「複素数」についての基礎知識は持っていた方がよいでしょう。
「高校レベルの内容はほぼ大丈夫」という場合は、このステップは飛ばしてください。
高校の「ベクトル」「2次曲線」「複素数」に関してのおすすめのテキストは
「大学への数学 1対1対応の演習 数学B」
「大学への数学 1対1対応の演習 数学Ⅲ 曲線・複素数編」
の2冊です。
この2冊は中堅レベルの大学入試問題まで対応可能です。
例題の問題数は
- 平面ベクトル → 13題
- 空間ベクトル → 12題
- 2次曲線 → 8題
- 複素数平面 → 14題
です。例題に1対1に対応した演習問題があり使いやすいです。
私は、1級の受検前に準1級を受検しましたが、その際に本書を2~3回繰り返して復習しました。
線形代数の準備だけを考えるなら、もう少し易しめのテキストでも構いません。自分に合うものを探してみてください。
※行列については、かなり昔に出版された「大学への数学 1対1対応の演習 数学C」で勉強をしました。高校の教科書にまだ「行列」があった時代ものです。
ステップ1 「マセマの線形代数」で基礎を徹底理解
それでは、まず初めに線形代数の基礎をしっかりと身につけましょう。
大学の線形代数を一から一通り学ぶのにおすすめのテキストはマセマシリーズの「線形代数キャンパスゼミ」です。
この本では、著者の馬場先生が独特の語り口調で、線形代数を一から分かりやすく解説してくれます。
具体例も豊富でとても分かりやすいです!
「線形代数キャンパス・ゼミ」の使い方
私はこのテキストを3回繰り返しました。
講義1 ベクトルと空間座標の基本
ここでの内容は1次検定でもよく出題されます。すべての土台となるところですので、完璧に理解しましょう。
講義2 行列
基本的な内容です。
「行列を列ベクトルに分割」にも慣れておきましょう。
「2元1次連立方程式の復習」は役立ちます。図も豊富なのでしっかりとイメージできるようにしておきましょう。
講義3 行列式
行列式について、仕組みから学ぶことができます。n次行列式の定義について、「置換」や「sgn」など丁寧な説明がありがたいです。
やや難しく感じるかもしれません。
「sgn」を利用した、定義からの展開は、実際の問題ではあまりみられません。
講義4 連立一次方程式
逆行列の求め方やクラメルの公式は完全にマスターしましょう。
n元連立1次方程式の解については、ノートに書き出したり、問題と何度も照らし合わせて、覚えていきましょう。分かってしまえば単純なことです。
講義5 線形空間
線形独立と線形従属について、根本からの理解を目指しましょう。演習問題が工夫されていて、なるほどの連続でした。
基底や次元についても勉強します。徐々に難しくなっていきますが、頑張りましょう。あせらず、しっかりと時間をかけるべき分野です。
私は講義5と講義6はノートを作りながら進めました。
部分空間は演習問題を解くことで、理解できると思いますs。
講義6 線形写像
線形写像の問題や像・核に関する問題もよく出題されます。
最初ははてな?の連続ですが、繰り返すうちに分かってきます。線形代数独立の理解しにくさがある分野ですね。
必要に応じて他のテキストも参照してみると良いでしょう。
表現行列や次元定理などについては、このテキストだけではまだ足りません。私は、他のテキストの問題も解く中で、その意味が理解できるようになりました。
最後の演習問題も難しいですが、ここまで説明しているテキストは他にありません。
講義7 行列の対角化
行列の対角化は最重要分野です。
対角化は「なぜそうなるのか」まで理解しておくことが必要です。私の場合、白紙の状態から始めて、対角化の仕組みを人に説明できるようになるまで、訓練しました。
本書の説明で理解しにくい場合は、後述する「準拠テキスト」も参考にしてみてください。
ここが理解できると、ジョルダン標準形で行なっている操作も理解できるようになります。
後半の「計量線形空間」については後回しでもいいと思います。
講義8 ジョルダンの標準形
ジョルダンの標準形については、本当に出題されるのかな?という思いもありましたが、出題されたこともあるようなので、やっておくことをお勧めします。
私の場合「準拠テキスト」の説明の方が理解しやすく感じました。
導入としては本書の方が入りやすいです。
※「演習 線形代数キャンパスゼミ」は購入しませんでした。
ステップ2 「合格ナビ!」で計算力UP
もう1冊、おすすめのテキストは「合格ナビ!数学検定1級1次 線形代数」です。
1級の1次に焦点をしぼった問題集で、よく出題されるタイプの問題を中心に構成されています。
この本の使い方については、以下の記事にまとめましたので、是非ご覧ください。
「テキストの特色」や「私の進め方」についてもご紹介しています↓
【数学検定1級】勉強法とおすすめ参考書・問題集「合格ナビ!数学検定1級1次 線形代数」
本書には過去問を中心に、基礎レベルから標準レベルまでの問題があり、時間が許せば是非取り組んでほしいテキストです。
ただし、線形代数に関しては、このテキストをとばして「準拠テキスト」に入ることも可能です。時間と相談しながら、取り組むべきかどうかを決めてください。
特徴1 具体的な図形問題が豊富
本書は、具体的な図形問題が豊富であることが特徴の1つです。
数学検定で頻出である、「直線の方程式」「平面の方程式」「球面の方程式」「四面体の体積」などの問題がしっかりと取り上げられています。
また、「不動点」や「不動直線」を求める問題があったり、「図形に対する線形変換」「合成変換」「回転変換・対称変換」など、後述する準拠テキストにはないタイプの問題があり、おすすめです。
特徴2 発展的な内容も扱っている
やや突っ込んだ内容も扱っています。
例えば、「単射・全射・全単射」「直交補空間」「フロベニウスの定理」「スペクトル分解」「ラグランジュの標準化」「2次曲面の標準化」などです。
これらの分野については、最初の段階では、さっと流し読みする程度の方がいいでしょう。
どの分野もコンパクトにまとまっているので使いやすいはずです。
ステップ2 実践力養成
次に取り組んでほしい本は「数学検定1級 準拠テキスト線形代数」です。
この本は外せません!
私自身、この問題集は3回くり返しました。
「本書の使い方」や、「私がいつ、どのようなペースで取り組んだか」については以下の記事をご覧ください↓
【数学検定1級】勉強法とおすすめ参考書・問題集「準拠テキスト線形代数編」
本書はおそらく、過去問やその類題を中心に編集されているので、合格レベルに最短で到達したい場合には非常に有効なテキストです。レベルは基礎~応用までと幅広く、1次検定、2次検定両方の内容に対応可能です。
本書では、特に「連立一次方程式」「ベクトル空間と線形写像」「2次形式」「ジョルダン標準形」の章が理解しやすく、良い問題がたくさんありました。
めちゃくちゃおすすめの問題集です!
同この準拠テキストは全部で151ページですので、同じシリーズの「微分積分」より、早く終えることができると思います。ぜひ頑張ってみてください。
使用する際のポイントは「繰り返すこと」。どんなに良いテキストを使っても、繰り返さないことには、効果は半減してしまいます。
ステップ3 過去問演習
ステップ3では過去問演習に入ります。
「完全解説問題集 発見」をメインに過去問に取り組みましょう。1度だけでなく、何度も繰り返し解くようにしてください。
私は「発見」以外に、以下の過去問を解きました。
- 「合格ナビ!」の巻末の過去問
- 以前受検した「336回」「339回」の問題
- Web上で公開されている問題
「発見」の使い方
過去問演習は重要です。以下の点に注意をして演習を続けましょう。
同じ問題でも解く
この「発見」には「準拠テキスト」と同じ問題や似たような問題が何題かあります。
何度も扱われる問題は「重要」な問題であるはずです。
以前に見たことがある問題であったとしてももう一度、解きましょう。何度も重要な問題に触れることで、かなり力も伸びます。
線形代数の問題だけ通しで解く
線形代数の問題だけを、通しで解いた方が頭の中が整理されます。
第1回から第7回まで、一通り解いていくことで、全体の傾向が見えてきます。「対角化」や「線形写像」の重要性に自ら気づきます。
繰り返し解く
くどいですが、過去問は1度解くだけでなく、何度も繰り返しましょう。
1級の検定では、過去問と似たような問題が結構出題されているので、過去問を勉強することで即得点に結びつくケースも多いのです。
私は、問題によっては、4回くらい繰り返し解きましたよ。
量をこなして計算力をつける
検定ではちょっとした計算ミスが命取りになります。
線形代数の分野は、固有値計算や対角化など計算量の多い問題が出題されます。
ここはたくさんの量をこなすことが大切だと思います。私自身、量をこなすことで、自分なりの効率の良い計算方法が身についたと思っています。
1次でも計算量が多い問題があります。例えば、「発見」の第5回、問題3などは結構な計算量ですね。
もちろん、量をこなすとともに、本番と同じような気持ちで、集中して取り組むことも大切ですよ。
まとめ
このように線形代数は微分積分とともに、1級受検生にとっては一番の核となる大事な分野です。
線形写像のように、理解するのに少し苦労する分野もありますが、じっくりと向き合い、その概念を一つ一つ自分のものにしていきましょう。
どうしても時間がない場合は以下の3ステップでもよいと思います。
時間が取れない場合の微積の進め方
①マセマの線形代数
②準拠テキスト線形代数
③過去問
今回は、数学検定1級の線形代数について、勉強法やおすすめの問題集を紹介してきました。
線形代数の分野からは、1次では2問、2次では必須問題として1問の出題があります。ここで紹介した方法を参考にして、ぜひを線形代数を得意分野にしてほしいと思います。
そして、多くの皆さんが「1級合格」を勝ち取れることを願っています。