今回ご紹介する本は、教育系YouTuberとして人気急上昇中であるたくみさんの著書
「難しい数式はまったくわかりませんが、微分積分を教えてください!」
です。
本書は次のように感じている方におすすめです。
「高校時代に微分積分を勉強したけれど、結局、微分積分って何なの?」
「今勉強中だけど微分積分の概念がよくわからない。」
「微分積分の本質を短時間で知りたい!」
もちろん、数学を教える立場の方にも読んでいただきたい本です。
分かりやすく、短時間で微分積分の本質的な部分を理解することができますよ!
本書を読もうと思ったきっかけ
私が、たくみさんの存在を知ったきっかけは、AbemaTvで放送された「ドラゴン堀江」です。
「ドラゴン堀江」は、ホリエモン(堀江貴文さん)が「売れな芸人を半年で東大合格に導く」という番組で、ホリエモンの数学講師として登場したのが、たくみさんでした。
ドラゴン堀江がきっかけで見始めた、たくみさんの動画はとても分かりやすく、毎回1回は出てくる「ボケ」が私のツボにはまりました。現在、たくみさんの運営するYouTube「ヨビノリ」を見るのを毎回楽しみにしています!
そんなたくみさんの出した本。これは期待が高まります。すぐにネットで注文しました。
読んでみると、これはおすすめです!
本書は、数式に苦手意識を持っている登場人物「エリさん」に「たくみさん」が分かりやすく、微分積分を教えていくという構成になっています。
元々、“数学的知識のない若いインフルエンサーたちに授業を行い、「微分積分」の本質をつかんでもらおう”という企画があり、本書はその授業内容をまとめたものですので、変に作り込んだ感じもありません。
楽しく読むことができますよ。
数学に物理の視点を入れる!
たくみさんのYouTube動画は、分かりやすいと評判になっています。
その理由をたくみさんは次のように話しています。
「数学に物理の視点が入っているから」
もともと、物理が専門のたくみさん。
「たんに数式を分かりやすく解説するだけではく、物理の視点を交えて現実の世界とつなげているので、数式がイメージしやすくなる」のだそうです。納得です!
本来、数学は物事の抽象的な部分だけを取り出して、考察をしていく学問です。しかし、抽象的な説明だけでだと中高生にとってはハードルが高い。
小さい子供にとっては抽象論だけでは完全に理解不能となります。
実際、数を覚えはじめた私の息子に「3たす2は?」というような質問をすると嫌がって拒絶されてしまいますが、息子の好きなチョコレートなどのお菓子を持ってきて、「いまチョコを3個もっているよ。お兄ちゃんに2個もらったらいくつになる?」というようにイメージできるような質問に変えると、途端に興味を持ちはじめます。
数学を学んだり、教えたりする際は、現実の世界とできるだけつなげることが分かりやすさにつながるんだと感じました。
今後は、イラストを用いたり、数学の対象を常に見せる工夫をしていこうと思います。
数学を学ぶ理由 「モノの見方が磨かれる」
数学を学ぶ理由については、実に様々な意見があります。
最近読んだ本の中では「東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!」の著者、西成活裕先生の「思考体力がつく」という考え方が面白く感じました。
【書評】東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!(西成活裕)
たくみさんは、数学を学ぶメリットとして、「モノの見方が磨かれる」という話を本書でしています。
この考え方、いいです!共感できました!
本書でも、数学を学ぶ理由が、いくつか紹介されていますので参考にしてみてください。
(1)いろいろなモノの見方ができるようになる
数学のメガネをかけて世の中を見ることができるようになる
→今回の微分・積分を使って世の中を見る見方など
(2)シンプルに考えるから最短で結果を出せる
経営者も数学に重きを置く人が多い→堀江貴文さんなど
(3)あらゆる物事、事象から一般的なルールを抜き出せる
→世の中は運動方程式からできている
「微分」とは「めちゃくちゃ小さな変化を見ること」
まずはじめに、「微分とは顕微鏡で小さなものを見るようなこと」という話からスタートし、具体的に微分の解説が始まります。
微分に必要な数学は「関数」「グラフ」「傾き」であるとし、本当に重要な部分だけに絞った、よく考えられた授業です。
身近な題材として、「距離」「速さ」「時間」を例にして、微分の考え方をかみ砕いて解説してくれます。
そして、微分とは傾きを求めるツールと定義し、「速度=傾き」と導きます。さらに、「平均の速度」から「瞬間の速度」へと展開してきます。
最後はよくある微分の説明と同じですが、たくみさんのすごいのは、「もっていき方・見せ方が上手!」というところです。
身近な題材からスタートし、グラフを用いた分かりやすく解説。そして最後にエリさん(登場人物)は、「微分係数の定義」を使って関数を微分することができるようになります。
微分係数の定義を用いた計算は、高校生の苦手とする部分ですが、あっさり短時間で到達してしまうから驚きです!
「積分」とは「めちゃくちゃ小さな変化を足すこと」
積分についても、「距離」「速さ」「時間」が題材となっています。
まずは、グラフを用いて
距離=面積
であることを説明。
そして、「速さ」が等速でない場合に、どうしたら「距離」を求められるか?という疑問を、少しずつ解決していきます。
教科書にあるような、「積分は微分の逆演算」というとらえ方は、結果としてでてくる説明の仕方でした。距離を求めるためには、面積を求める必要がある。長方形じゃない面積をもとめるに、求めたい面積の中に「短冊」を描いていく手法を使っています。
もちろん、これもよくある説明なのですが、とても分かりやすく、サクサク読み進められます。
積分記号のインテグラル\(\int \)の説明、進め方はおみごとです!こんな感じで説明をすれば、高校生も理解しやるいと思いました。
練習問題では積分の公式は使わずに説いています。こういう感覚も大事です。エリさんすごいです。
まとめ 円の面積も積分から
最後の章には、「円の面積」や「球の体積」を、積分を用いて導いています。ここもよく工夫されているなあという印象でした。
円の面積と積分が結びつくことで、より微分積分に親しみが持てるのではないかと思いました。
「おわりに」にあったフレーズ
“In order to tell the truth, you have to lie”
は、なるほどと思いました。
「真実を伝えるためには嘘をつく必要がある」というものです。
本書では、分かりやすく「真実」を伝えるために、内容を絞り、難しい言葉を避けています。教科書で出てくるややこしい「用語」や「説明」はカットされています。
でも、そのおかげで、読者に伝わる分かりやすい説明になっている!
本書を読み終えた私の最初の感想は
「内容を厳選し、分かりやすく伝えるために、ものすごいエネルギーが使われている」
です。
「伝わる」ということに全力をかけるところに「プロの意識」を感じました。
「100を話して、10しか伝わらないよりも、50を話して30を伝えられる人になりたい」
私自身も座右の銘にしていきたいと思います。
「難しい数式はまったくわかりませんが微分積分を教えてください!」
オススメです!