数学検定の最高峰である「数学検定1級」
数検1級合格のためには、最重要分野の1つである「微分積分」の力を高いレベルまで上げておく必要があります。
今回の記事では、1級の微積を効率よくマスターしていく方法について、解説していきたいと思います。
数学検定1級の「確率統計」対策はこちらをご覧ください↓
微分積分の分野は広く、多岐にわたっているため、安定した得点力を身につけるにはある程度時間がかかります。早い段階から準備を進めていきましょう。
ステップ0 まずは高校レベルの微積分を完全マスター
数検1級の微積分をマスターするために、まずは高校レベルの微積分の知識が前提となります。
できれば、中堅の大学の入試問題が解けるレベルであることが望ましいです。
「高校レベルの微積分はほぼ大丈夫」という場合は、このステップは飛ばしてください。
大学入試レベルの攻略法に関しては、ネットでも情報がたくさん見つかると思います。
微積分で私がおすすめするテキストは「大学への数学 1対1対応の演習 微分積分編」と「大学への数学 1対1対応の演習 曲線・複素数編」の2冊です。
この2冊は大学入試では多くの受験生が使っている定番の問題集ですよね。
黄色チャートなどで基本的な解法を身につけてから本書に取り組みましょう。
問題数は
- 微分積分編 → 例題75問、演習75問
- 曲線・複素数編 → 例題36問、演習3問
です。
私は、1級の受検前に準1級を受検しましたが、その際に本書を2~3回繰り返して復習しました。
本書は、例題と演習題が1対1に対応しており、各テーマごとに良問が用意されていますので、きちんとやれば相当力がつきます。できれば演習題もやってほしいところですが、時間がなければ例題だけでもよいでしょう。
本書の他にもたくさんの問題集がありますので、自分に合うものを探してみてください。
私は、微分積分については得意分野にしたかったので、この「1対1対応」2冊に加えて「微積分/基礎の極意」の第3部もやりました。
第3部にはテーマに沿った問題が64題用良問が用意されています。こちらはかなり時間がかかりますので時間に余裕のない方は無理にやらなくてもいいでしょう。
ステップ1 微積分の基礎を学ぶ
それでは、まず初めに基礎力を養成しましょう。
キャンパス・ゼミ「微分積分」で基礎を完全マスター
大学の微積分を一通り学ぶのにおすすめのテキストはマセマシリーズの「微分積分キャンパスゼミ」です。
この本では、大学の微積分を独特の語り口調で、一から分かりやすく解説してくれます。
同じシリーズの「統計」については、証明の過程が難しく挫折しやすいという記事を書きましたが↓、この「微分積分」はわかりやすく、初学者にもおすすめです!
【数検1級】マセマのキャンパスゼミ「統計学」の効果的な使い方【初学者は挫折します】
キャンパス・ゼミ「微分積分」の使い方
この本の最初の方でいきなりε-N論法がでてきます。ε-N論法に関してはカットしても大丈夫です。ε-N論法を丁寧にやろうとすると、重要なところにかける時間が少なくなってしまいます。
以前までの私は、問題集を最初から最後まで真面目にやる癖があり、このε-N論法にもチャレンジしました。しかし、1級でε-N論法が出題されたのは見たことがありませんので、いまとなっては時間のロスだったと感じています。
ε-N論法以外の部分は原則としてすべて取り組んでください。
私は、本書を3回ほど繰り返しました。1回目は時間がかかりますが、2回目、3回目は間違えた問題だけ解きなおしましたので、それほど時間はかかりませんでした。
●注意点・・・「2変数関数の極値の決定法」で、本書の場合
$$f_{xy}^2-f_{xx}f_{yy}$$
の符号で場合分けをしています。多くのテキストでは
$$f_{xx}f_{yy}-f_{xy}^2$$
が使われていると思いますので注意しましょう。
キャンパス・ゼミ「演習 微分積分」で演習量を増やす
キャンパス・ゼミ「微分積分」の内容がほぼ身についたら、同シリーズの「演習 微分積分」にも取り組みます。
ただし、時間がない場合は、この「演習編」はカットし、後述する「準拠テキスト微分積分」にすぐに入りましょう。
この「演習編」では、「微分積分キャンパスゼミ」と似たような問題がたくさんあります。勉強をしていくと、類題ばかりでやや「飽き」がでてきます。「飽き」を防ぐためにも、うまく問題を取捨選択して取り組んでみてください。
「微分積分」編にはない内容もいくつか扱われていますので、値段は高めですがやる価値はあると思います。
キャンパス・ゼミ「演習 微分積分」の使い方
「微分積分」では簡単にしか触れられていなかった問題、扱われなかった問題も「演習編」には含まれていますので、一通り解いてみることをおすすめします。
時間がない場合は「キャンパスゼミ微分積分」で扱われていない以下の内容を中心に勉強していくと良いでしょう。
- 2変数関数のテイラー展開・マクローリン展開
- 極方程式で表される図形の曲面積
- 回転体の表面積
- 立体の体積
- 曲面の面積
- 3重積分
●注意点・・・「直交する直円柱の共有部分の体積」の解説は、後述する「準拠テキスト微分積分」の方が分かりやすかったです。
「合格ナビ!数学検定1級1次 確率統計・解析」は計算力UPに有効
もう1冊、おすすめのテキストは「合格ナビ!数学検定1級1次 確率統計・解析」です。
1級の1次に焦点をしぼった問題集です。
タイトルが数学検定1級となっているくらいですので、1級対策には最適です。この本の内容が直接出題されてもおかしくありません。1級でよく出題されるタイプの問題を中心に構成されています。
この本の使い方については、以下の記事にまとめましたので是非ご覧ください。
【数学検定1級】勉強法とおすすめ参考書・問題集「合格ナビ!数学検定1級1次 解析・確率統計」
マセマシリーズよりも問題量が豊富ですので、計算力を鍛えるのにうってつけの本です。
時間が許せば是非取り組んでほしい問題集です。
ただし、早い段階で1ステップ上のレベルの問題に触れることも必要です。時間と相談しながら、次のステップ2へ早めに移行していくことも頭に入れておきましょう。
ステップ2 実践力養成
次に取り組んでほしい本は「数学検定1級 準拠テキスト微分積分」です。
結論から言ってしまうと、この本は最強です!
私自身、この問題集は4回くり返しました。
「本書の使い方」や、「私がいつ、どのようなペースで取り組んだか」については以下の記事をご覧ください。
【数学検定1級】勉強法とおすすめ参考書・問題集「準拠テキスト微分積分編」
本書も数学検定1級で出題される内容に絞ったテキストになってますので、ポイントを絞った勉強が可能です。
レベルは基礎~応用までと幅広く、1次検定、2次検定両方の内容に対応可能です。
おそらく、過去問を中心に編集されているので、合格レベルに最短で到達したい場合には非常に有効です。
この準拠テキストは全部で198ページ。
レベルが3段階に分かれていて「印なし」は易~標準レベル、「★」は難レベル、「★★」は「極難」レベルで、★★の問題は1問理解するのに1時間くらいかかるものもありました。
初めて取り組む方は、最初は★★の問題は飛ばしたほうがよいと思います。
★問題でも難解なものがありますが、頑張って取り組むと力が確実につきます。
すべてやり終えるには時間がかかりますが、かなり力をつけることができますよ!
ステップ3 過去問演習
ステップ3では「数学検定1級 完全解説問題集 発見」をメインに過去問に取り組みましょう。発見以外でも、以下の過去問を解きました。
- 「合格ナビ!」の巻末の過去問
- 以前受検した「336回」「339回」の問題
- Web上で公開されている問題
「完全解説問題集 発見」の使い方
同じ分野の問題だけ通して勉強すると頭に入りやすくなります。
私の場合、まずは2次検定の必須問題である問題6(線形代数)と問題7(微分積分)だけを一通り解いてみました。
注意点①
2次検定の問題7では微分積分以外にも「微分方程式」の出題が結構あります。
私が合格できた第344回検定2次の問題7も「4階線形微分方程式でした」
【数学検定】第344回「数学検定1級」の受検報告〔2次検定編〕
微分方程式に関しては、別の問題集で対策が必要です。
注意点2
「完全解説問題集 発見」の第6回2次「問題7」はかなり厄介です。この問題は後回しでよいかと思います。
同じく第1回2次「問題1」も大学入試レベルですがやりにくいでしょう。
過去問では「準拠問題集」でも出てこない目新しい問題も結構ありますので、何度も解いて思考力を鍛えていきましょう。できそうな問題からでもいいですので、頑張って過去問になれていきましょう。
まとめ
微分積分は線形代数とともに、1級受検生にとっては一番の核となる大事な分野です。
しかも、線形代数よりもテキストを終えるのに時間がかかります。
どうしても時間がない場合は以下の3ステップでもよいと思います。
時間が取れない場合の微積の進め方
①キャンパス・ゼミ微分積分
②準拠テキスト微分積分
③過去問
これでも、合格最低点は取れるのではないかと思います。
今回は、数学検定1級の微積分について、勉強法やおすすめの問題集を紹介してきました。
ここで紹介した方法を参考にして、ぜひ微分積分を得意分野にしてほしいと思います。そして、数学検定の最高峰である「1級合格」を勝ち取りましょう!