「\( 10\) の位が同じで\( 1\) の位の和が\( 10\) 」である\( 2\) 桁×\( 2\) 桁のかけ算は暗算で簡単に求めることができます!
例えば
\[34\times 36\]
\[63\times 67\]
\[ 98\times 92\]
のようなかけ算です。
どの式も\( 10\) の位が同じ数で、\( 1\) の位の数の和が\( 10\) となっていますね。
これらを簡単に計算する方法は「インド式計算法」と呼ばれています。
本記事では、このインド式計算法のやり方を説明し、なぜ簡単に計算できるのかを図を用いて解説していきます。
最後に式を用いた証明も示しておきますので、ぜひ最後までお読みください。
インド式計算法のやり方
まず始めに、計算のやり方を説明します。ここでは「\( 10\) の位の数が同じで,\( 1\) の位の和が\( 10\) 」である\( 2\) 桁の数のかけ算を扱います。
※「イメージ」や「証明」は後半でご紹介します。
〔例1〕 \( 34\times 36\)
まず,共通な\( 10\) の位の数「\( 3\) 」と,その\( 3\) に\( 1\) を加えた「\( 4\) 」をかけ算します。
\[ 3\times 4= 12 \; \cdots ①\]
次に1の位の数「\( 4\) 」と「\( 6\) 」をかけ算します。
\[ 4\times 6=24 \; \cdots ②\]
最後に①②を順番に並べます。
\[ \underline{12}_{①}\underline{24}_{②}=1224 \]
これが答えです。簡単ですね!
ではもう一問やってみましょう。
〔例2〕 \( 63\times 67\)
まず,共通な\( 10\) の位の数「\( 6\) 」と,その\( 6\) に\( 1\) を加えた「\( 7\) 」をかけ算します。
\[ 6\times 7= 42 \; \cdots ①\]
次に\( 1\) の位の数「\( 3\) 」と「\( 7\) 」をかけ算します。
\[ 3\times 7=21 \; \cdots ②\]
最後に①②を順番に並べます。
\[ \underline{42}_{①}\underline{21}_{②}=4221 \]
これが答えです。
さすがインド式!めんどうな筆算も不要ですね。
インド式計算を図で解説
では、なぜこのように簡単に計算できるのかを、図を使って解説していきます。
まずは最初の例で考えていきましょう。
〔例1〕 \( 34\times 36\)
縦が\( 34\) ,横が\( 36\) の長方形を考えると,答えは長方形の面積になります。
\(34=30+4,\;\; 36=30+6\; \)に区切って考えます。図の\( 4\) つの部分の面積の和を求めればよいわけです。
この図で左下の長方形を切り取って,右上に移動すると,図のようにぴったり重なります。
ここで図の赤色をつけた長方形の面積は,右側の\(6+4 \)が\( 10 \) になるので
\begin{align}
30\times (30+10)&=30\times 40\\
&=1200\; \cdots ①
\end{align}
下の部分にある長方形(青色)の面積は
\[ 4\times 6=24 \cdots ② \]
①と②を加えて
\[ 1200+24=1224 \]
となります。
①の式を見てほしいのですが、\( 30 \times 40 \) の\( 10\) の位の数が「\( 3\) 」と「\( 4\) 」になっています。
この「\( 3\) 」と「\( 4\) 」がインド式計算法に出てきた,\( 10\) の位の「\( 3\) 」と\( 3) に\( 1\) を加えた「\( 4\) 」となっているのです。
さらに、①式の一の位はともに\( 0\) ですので,かけ算をすると下\( 2\) 桁には必ず0が並びます。
これがインド式計算法で、だた並べても大丈夫な理由です。
では,2番目の例についても考えてみましょう。
〔例2〕 \( 63\times 67\)
縦が\( 62\) ,横が\( 68\) の長方形を考えます。
\(63=60+3,\;\; 67=60+7\; \)に区切って考えます。図の4つの部分の面積の和を求めます。
左下の長方形を切り取って,右上に移動すると,先ほどと同様ぴったり重なります。
ここで赤色をつけた長方形の面積は,右側の\(7+3 \)が\( 10 \) になるので
\begin{align}
60\times (60+10)&=60\times 70\\
&=4200\; \cdots ①
\end{align}
下の部分にある青色の長方形の面積は
\[3\times 7=21 \cdots ②\]
となります。
①と②を加えて
\[ 4200+21=4221 \]
と答えが導かれます。
先ほど同様で、①の式\( 60 \times 70 \) の\( 10\) の位の数「\( 6\) 」「\( 7\) 」は,
インド式計算法に出てきた,\( 10\) の位の数「\( 6\) 」と\( 6\) に\( 1\) を加えた「\( 7\) 」となっています。
①式の一の位はともに\( 0\) ですので,かけ算をすると下\( 2\) 桁に\( 0\) が並びますね。
インド式計算法の証明
最後に,今回見てきた「インド式計算法」を証明します。
「\( 10\) の位が同じで\( 1\) の位の和が\( 10\) 」である\( 2\) 桁の整数をそれぞれ
\[ 10a+b,\quad 10a+c\]
とおきます。ただし\( a \) は\( 1\) 以上\( 9\) 以下の自然数,\( b,\; c\) は\( 0\) 以上\( 9\) 以下の整数です。
\( 1\) の位の数の和が\( 10\) なので
\[ b+c=10 \; \cdots ③ \]
が条件となります。
では,この2つの積を計算してみましょう。
\begin{align}
(10a+b)(10a+c)&=10a\cdot 10a +10a\cdot c +10a\cdot b +bc\\
&=10a\cdot 10a+10a(b+c)+bc\\
&=10a\cdot 10a+10a\cdot 10 +bc\;\; (b+c=10より)\\
&=10a(10a+10)+bc\\
&=100a(a+1)+bc\cdots ③
\end{align}
③式の\( 100a(a+1)\) は\(a(a+1)\) を\( 100\) 倍したものです。
\( 10\) の位の数字「\( a \)」 とその\( a \) に\( 1\) を加えた「\( a+1 \) 」をかけたものになっていますね。
これを\( 100\) 倍しているので,下\( 2\) 桁の数は\( 0\) となります。
③式の\( bc \) は一の位どうしの積です。
以上の結果から,「\( 10\) の位の数\( \; a\; \) とそれに\( 1\) を加えた\( \; a+1 \; \) の積」と「\( 1\) の位どうしの積」を並べて書けば、それが答えになるのです。
まとめ
今回は「\( 10\) の位が同じで\( 1\) の位の和が\( 10\) 」である\( 2\) 桁×\( 2\) 桁のかけ算を、簡単に求める方法とその仕組みについて解説しました。
とても便利な計算ですが、ぜひ仕組みも合わせて理解しておきましょう。
図を使ってイメージで理解しておくことをおすすめします。