・モンティホール問題について詳しく知りたい
・モンティホール問題を「条件つき確率」で解く方法を知りたい
・モンティホール問題を「簡単に解く」方法を知りたい
こんな悩みを解決します。
モンティ・ホール問題をご存知ですか?
モンティホール問題はアメリカのテレビ番組『Let’s make a deal(駆け引きしましょう)』で取り上げられたゲームのこと。
単純な問題であるにもかかわらず、数学史上、最も議論を引き起こしたとも言われいています!
でも、このモンティホール問題、高校の数学A「条件つき確率」の知識があれば、きちんと証明することが可能です!
本記事では、モンティホール問題を「条件つき確率で解く方法」「数式なしで簡単に解く方法」について詳しくご紹介していきます。
✔︎本記事の内容
・モンティホール問題とは
・モンティホール問題を「条件つき確率」で解く方法
・モンティホール問題を「数式なし」で簡単に解く方法
以下の本も参考にさせていただきました。
【青チャート】
受験数学の定番「青チャート」です。持っている人もお多いのではないでしょうか?
モンティホール問題については、コラムで簡単に紹介されています。
青チャートは網羅性があるだけでなく、コラムも興味深いですよ!
【ふたたびの確率・統計】
この本は高校で習う「確率」の内容について、行間を埋めるというコンセプトで書かれた本です。
様々な話題が豊富でとても分かりやすい本です。
「意外な確率」のところでモンティ・ホール問題が紹介されています。
それでは、まずは「モンティ・ホール問題とは何か」から解説していきます!
モンティ・ホール問題とは
モンティ・ホール問題は、1990年にモンティ・ホール氏が司会をつとめるアメリカのテレビ番組,
『Let’s make a deal(駆け引きしましょう)』
で取り上げられたゲームです。
数学史上、最も議論を引き起こしたと言われています!
実際モンティホール問題は、数学者でさえ間違えるような意外な結果が現れ、多くの人を悩ませました。
正解に関する論争は2年にも及んだというエピソードも残されているから興味深いですね!
モンティ・ホール問題「テレビ番組」
【モンティ・ホール問題】
目の前に3つのドアA,B,Cがあります。
1つのドアには新車(当たり)が、残りの2つのドアにはヤギ(はずれ)が隠されています。
挑戦者はこの3つのドアのうち1つのドアを選び、新車の隠れているドアを当てればそれがもらえます。
挑戦者が1つのドアを選んだ後、司会者モンティ(答えを知っている)が残った2つのドアのうち「はずれ」のドアを1つ開け、挑戦者にこう提案します。
「選びなおしてもいいですよ!」
「あなたは選んだドアを変えますか?それともそのまま変えませんか?」
さあ、あなたならどうしますか?
一見、単純に思えるこのゲームが、後々大論争を巻き起こすことになったのです!
モンティ・ホール問題「わかりやすく」
モンティホール問題を、もう少しわかりやすく設定し直しておきます。
【モンティ・ホール問題】
今、3つのドアA,B、Cがあります。
挑戦者がAのドアを選んだとき、司会者は「はずれ」であるCのドアを開けたとします。
このとき、挑戦者は選択したドアをBに変えることもできます。
Aのままにしておくべきか?
Bに変更すべきか?
これが「モンティ・ホール問題」です。
とある投稿が大論争に!
実際にこのゲームに挑戦したゲストは、次の理由でドアを変えなかったそうです。
AのドアかBのドアのどちらかに新車が隠されているのだから、当たる確率はAでもBでも\( \displaystyle \frac{1}{2} \) で同じ。
それなら変えないほうが後悔しない。
これに対して、当時「世界一IQが高い人物」としてギネスブックに認定されていたマリリン・ボス・サバントさんは、雑誌に連載していたコラム「マリリンにおまかせ」で次のような投稿をします。
「ドアを変更するべきよ!ドアを変更すれば景品を当てる確率が2倍になるんだから。」
と回答しました。
この投稿に対して、読者からは
「彼女の解答は間違っている」
との投書が1万通も届いたそうです!
この投稿がきっかけで、モンティ・ホール問題は数学者も巻き込む大議論に発展しました。
あなたは、どちらが正しいと思いますか?
モンティ・ホール問題の正解
この問題の正解は「ドアを変えるべき」です。
後ほど解説しますが、当たる確率は
ドアを変えない場合 \( \displaystyle \frac{1}{3}\)
ドアを変えた場合 \( \displaystyle \frac{2}{3}\)
となり、マリリンの言う通り「ドアを変えると当たる確率が2倍」になっています!
「えっ?意外だ!」という印象を持たれたかもしれませんが、これが正解です。
それではまずは「条件つき確率」を使ってモンティ・ホール問題の正解を求めていきましょう。
条件つき確率を使った解説
証明に使う式
証明に使う式は「条件つき確率」「確率の乗法定理」の2つです。
条件付き確率\[ P_X(Y)=\frac{P(X\cap Y)}{P(X)}\]
確率の乗法定理\[ P(X\cap Y)=P(X)P_X(Y) \]
問題設定
3つのドアをA,B,Cとし、挑戦者が最初にAを選んだとする
このように設定しても一般性を失いません。
ドアA,B,Cに賞品が隠れているという事象をそれぞれA,B,C,司会者がドアCを開ける事象をZとします。
ここが大事ですので,しっかり頭に入れてから解説を読み進めてみてください。
目標
目標は以下の2つの確率を計算し、比較することです。
司会者がドアCを開けたという条件で
Aに賞品が隠れている確率\( P_Z(A)\)
Bに賞品が隠れている確率\( P_Z(B)\)
これらは,先ほどの条件つき確率を用いて
\[ P_Z(A)=\frac{P(Z\cap A)}{P(Z)}=\frac{P(A\cap Z)}{P(Z)}\]
\[ P_Z(B)=\frac{P(Z\cap B)}{P(Z)}=\frac{P(B\cap Z)}{P(Z)} \]
と変形できますので,右辺の分母と分子に出てきた
\[ P(A\cap Z),\; P(B\cap Z),\; P(Z) \]
を求めていきます。
解答
まず,賞品は無作為に3つドアのいずれかに隠されているので,ドアA,B,Cに賞品が隠れている確率は
\[ P(A)=P(B)=P(C)=\frac{1}{3}\]
です。
ここで、ドアA,B,Cに賞品が隠されているときに,司会者がドアCを開ける条件付き確率をそれぞれ求めると
\[ P_A(Z)=\frac{1}{2} \]
\[ P_B(Z)=1 \]
\[ P_C(Z)=0 \]
となります。理由は以下の通りです。
(理由)
・ドアAに賞品が隠されていという条件では,司会者はドアBまたはドアCのどちらかを開けるので,
\( P_A(Z)=\displaystyle \frac{1}{2}\)
・ドアBに賞品が隠されているという条件では,司会者はドアCを開けるしかないので,
\( P_B(Z)=1\)
・ドアCに賞品が隠されているという条件では,司会者はドアCを開けることができないので,
\( P_C(Z)=0\)
上の結果と確率の乗法公式を用いると
\begin{align*}
P(A\cap Z)&=P(A)P_A(Z)\\
&=\frac{1}{3}\cdot \frac{1}{2}\\
=&\frac{1}{6}
\end{align*}
\begin{align*}
P(B\cap Z)&=P(B)P_B(Z)\\
&=\frac{1}{3}\cdot 1\\
&=\frac{1}{3}
\end{align*}
\begin{align*}
P(C\cap Z)&=P(C)P_C(Z)\\
&=\frac{1}{3}\cdot 0\\
&=0
\end{align*}
これより
\begin{align*}
&P(Z)\\
&=P(A\cap Z)+P(B\cap Z)+P(C\cap Z) \\
&=\frac{1}{6}+\frac{1}{3}+0 \\
&=\frac{1}{2}
\end{align*}
が導かれました。
ここで求また3つの式
\begin{align*}
&P(A\cap Z)=\frac{1}{6}\\
&P(B\cap Z)=\frac{1}{3}\\
&P(Z)=\frac{1}{2}
\end{align*}
を用いて
\begin{align*}
P_Z(A)&=\frac{P(Z\cap A)}{P(Z)}\\
&=\frac{P(A\cap Z)}{P(Z)}\\
&=\frac{1}{6}\div \frac{1}{2}\\
&=\frac{1}{3}
\end{align*}
\begin{align*}
P_Z(B)&=\frac{P(Z\cap B)}{P(Z)}\\
&=\frac{P(B\cap Z)}{P(Z)}\\
&=\frac{1}{3}\div \frac{1}{2}\\
&=\frac{2}{3}
\end{align*}
と答えが求まります。
ドアを変えないでAのままだと,賞品をもらえる確率は\( \displaystyle \frac{1}{3}\) のままですが,ドアをBに変えると,賞品をもらえる確率は\( \displaystyle \frac{2}{3}\) と,確率が2倍になることが確かめられました!
数式を使わないで解説
続いて,数式をほとんど使わずにモンティ・ホール問題を考えてみます。
ドアを変えない場合
ドアを変えない場合、
当たる確率は\( \frac{1}{3} \)です。
これは明らかでしょう。
A、B、Cの3のドアのうちどれか1つが当たりであり、あなたはそのうち1つのドアを選んだのですから、当たる確率は\( \displaystyle \frac{1}{3} \)のままです。
ドアを変える場合
ドアを変えた場合,次の事実が成り立ちます。
1.最初に当たりを選ぶ
→ ドアを変えれば必ずはずれる
2.最初にはずれを選ぶ
→ ドアを変えれば必ず当たる
例を見ながら理解していきましょう。
1. 最初に当たりを選ぶ→ドアを変えれば必ずはずれる
例えば,ドアAに「当たり」の賞品が隠されているとします。
挑戦者が当たりであるドアAを選んだとき,司会者はBかCどちらかのドアを開けます。
このとき挑戦者はドアをBかCのうち司会者が開けなかったドアに変えるしかありません。
したがって,ドアを変えれば必ず「はずれ」となることが分かります。
2. 最初にはずれを選ぶ→ドアを変えれば必ず当たる
同じように,ドアAに当たりの賞品が隠されているとします。
ここで例えば,挑戦者がはずれであるドアBを選ぶと,司会者はドアCを開けることになります。
このとき挑戦者は挑戦者はドアをAに変えるしかないので、必ず「当たり」となります。
同様に,挑戦者がドアCを選ぶと,司会者はドアBを開けることになります。
したがって,挑戦者はドアをAに変えるしかないので,必ず「当たり」となります。
【まとめ】当たりる確率が簡単に求まる
✔︎ドアを変えない場合
当たる確率は\( \displaystyle \frac{1}{3}\)
✔︎ドアを変える場合
「最初にはずれを選べば必ず当たる」ので,最初にはずれを選ぶ確率を求めて
当たる確率は\( \displaystyle \frac{2}{3}\)
以上より,「ドアを変えた方が変えないときよりも,当たりとなる確率が2倍となる」ことが証明できました!
まとめ
意外な確率で有名な「モンティ・ホール問題」
今回は、この「モンティ・ホール問題」の概要と2通りの証明について解説しました。
- 条件つき確率の利用
- 数式を使わない方法
結果は「ドアを変えたると確率は2倍になる」となり,直感とは異なると感じた人も多かったのではないかと思います。
モンティ・ホール問題のように「意外に感じる確率」の例はたくさんあります。
みなさんもぜひ、いろいろと調べてみてくださいね!
今回は以上です。最後までお読みいただき,ありがとうございました。