・イノベーションを起こすようなアイディアはどのようにして生み出されるのか知りたい
・ユーザーインターフェース研究の世界的第一人者の発想法を学びたい
想像を超えるアイデアはどのようにして生み出されるのでしょうか?
その答えがこの本の中にあります。
「妄想する頭 思考する手(暦本純一)」
著者の暦本純一さんは、東京大学大学院情報学環教授、ソニーコンピュータサイエンス研究所フェロー・副所長、ソニーCSL京都ディレクター、博士(理学)。
暦本さんは、スマホやタブレットの画面を2本の指で広げたり狭めたりする「スマートスキン」の発明者で、ヒューマン・コンピュータ・インタラクション研究(人間と計算機とのインターフェースについて着目した学問)の第一人者です。
本書では、「妄想」をメインテーマに置き、イノベーションを生み出すための方法が、著者の体験をもとに惜しみなく紹介されています!
それでは、私が本書から学んだ3つの点についてご紹介していきます。
やりたいこと面白いと感じることを大切にする
暦本さんが発明した「スマートスキン」はスマホやタブレットの画面を2本指で広げたり狭めたりできる画期的な技術。
世界中で使われているとても便利なものです。
ところが実はこの技術、スマホやタブレットのために開発されたわけではなかったのだそうです!
何か課題があったわけでもなく、誰かにに頼まれたわけでもなく、スマートスキンは開発されたのです。
実際に暦本さんは
現実世界ではものを一本指で操作することのほうがめずらしいのに、なぜマウスでは常に一本指ですべてを操作するような「不自然さ」を当たり前のようにうけいれているのだろうか。
といった素朴な疑問からスマートスキンの開発を始めています。
つまり、素朴な疑問がイノベーションのスタート地点だったのです!
「技術開発は、まず何か具体的な課題があって、その解決のためにする」というのが一般的な考え方。
ところが、暦本さんは次のように述べています。
未来の予測ができなければ、当然、「どんな課題を解決すべきか」もわからない。「やるべきこと」が見えないのだから、課題解決型の真面目なやり方だけでは、予測不能な未来に対応するイノベーションを起こすことはできないだろう。
想像を超えるアイデアは「課題を見つけ、その課題を解決するために新しいものを生み出す」という考え方から離れたところから生まれていたのです。
ここから私が学んだとこは以下の点です。
「世の中の問題を解決するためにアイデアを考える」のではなく「自分の中から勝手に生まれるアイデアを大切にする」
自分自身の中にある「やりたいこと」や「素朴な疑問」から生まれたアイディアが新しい未来をつくる可能性は十分にあります。
「アイデアの源は外ではなく自分自身の中にある」
「アイデアの種である妄想を膨らませる」
自分の中にあるものを引き出していくためにも、自分自身の「やりたいこと」や「これ面白い」と感じることを大切にしていくことが重要ですね。
「やりたいこと」は一行で言い切る
それでは、自分が抱いた妄想を形にしていくにはどうしたらよいのでしょうか?
妄想を形にするための最強の思考ツールが「言語化」です。
妄想レベルのアイデアは自分自身でも、その意味や面白さがはっきりと分かっていない場合があります。
「なんとなく面白そう」という段階で、まだモヤモヤしている状態です。
この状態で著者が大事にしている思考ツールが「言語化」なのだそうです。
絵や図などのビジュアルも大事ですが、本書ではつぎのようにまとめられています。
言語化・・・WHAT(何をしたいか)、WHY(なぜやりたいのか)を明確にしてくれる
絵や図などのビジュアル・・・HOW(どうやるか)を考えるときに有効
言語化することで、モヤモヤとした頭の中がはっきりとした形になります。
言語化によって、妄想が現実に向かって大きく動き出すのです。
具体的には、妄想の言語化は「やりたいことを一行で書く」ことから始めます。
妄想(やりたいこと)は頭の中のモヤモヤでもあるので、いざ書き出してみると「これもあるし、あれもある」とダラダラと長いものになってしまいがちです。
これは自分でも何がしたいのかよく分かっていない状態です。
だからこそ「やりたいことは一行で書き切る」
一行でうまく伝わらないなら、そのクレーム自体に大したインパクトがないということだ。自分自身の思考がまだ十分に整理されていないのかもしれない。
頭の中で無限に広がってしまいそうなアイデアを、できるだけ短い言葉で言い切ることで、そのアイデアは洗練されていきます。
本書では一行で言い切っている例がいくつか紹介されています。
一行で言い切っているの例(本書より)
「DNAは二重螺旋(らせん)構造をしている」
「口腔内の超音波映像を解析すればしゃべっている内容が分かる」
一行で言い切ることで、自分自身の考えもまとまるし、相手にも伝わりますね。
最後に、この節のポイントをまとめておきます。
・やりたいことは一言で言い切る
・あいまいな表現はダメ
・一行でまとめられたことは人の感想を聞きやすい。
・一行で言い切れないなら、大したインパクトがない
見る前に跳べ
アイデアは、思いついただけでは実現しません。
良いアイディアを思いついたら様子を見ているのではなく、実際に手を動かす必要があります。
アイデアは、様々な実験や試行錯誤を経て形になっていくからです。
ということで、3つ目の学びは「見る前に跳べ」です。
※英語でも「Leap Before You Look」という格言があるそうです。
「見る前に跳べ」とは
跳ばないで考えているより、跳んで失敗した方が、得るものが断然大きい。
という意味。
つまり、「失敗を恐れて考えていないで行動せよ」ということでしょう。
様々なビジネス書でもいわれているように「失敗は成功のもと」ですからね。
そして、アイデアが出てきたら、熟考していないでとにかく動きましょう。アイデアも鮮度が大切です。
本書には「アイデアは鮮度が大事」とう話が何度かでてきますよ。
これは前にも話したが、料理の素材と同じで、アイデアも鮮度が大事だ。思いついたら、フレッシュなうちに手を動かして調理を始めたほうがいい。
本書ではスピード感の重要性を思い知らされたエピソードとして、GANというAIアルゴリズム研究をめぐる話をとりあげています。
こういった実際のエピソードは説得力があります。
本記事ではとりあげませんが、非常に興味深い話でしたので、詳しく知りたい方はぜひ本書を読んでみてください。
まとめ
本書では「イノベーションを起こすようなアイデアはどのようにして形になるのか」について、著者である暦本さんの体験をもとに惜しみなく紹介されています。
私の気づきは以下の3点でした。
- やりたいこと面白いと感じることを大切にする
- やりたいことは一行で言い切る
- 見る前に跳べ
最終的に、本書を読んで一番の気づきは「人生はそんなに長くない」ということです。
準備しているだけの人生になってしまわないためにも「見る前に跳ぶ」ことをくりかえしながら、自分自身の本当にやりたいことをすべてやりきりたいと思いました。
「妄想する頭 思考する手」おすすめです。
最後までお読みいただきありがとうございました。