本記事では文字式を用いた「\( 1=2 \) 」の証明を2通りの方法でご紹介し、その間違いについて解説をしていきます。
では、さっそく見ていきましょう。
「\( 1=2 \) 」の証明 その1
因数分解を用いる方法です。
まず
\[ a=b \]
とし、両辺に\( \; a \) をかけます。
\[ a^2=ab \]
次にこの両辺から\( \; b^2\; \)を引きます。
\[ a^2-b^2 =ab-b^2 \]
続いて左辺と右辺をそれぞれ因数分解します。
左辺は和と差の積の公式、右辺は共通因数\( \; b\)を取り出しましょう。
\[ (a+b)(a-b)=b(a-b) \]
この式の両辺を\( a-b \) で割ると
\[ a+b=b \]
\( a=b \; \)なので、\( b\) を\( a \) に置き換えます。
\[ a+a=a \]
\[ 2a=a \]
最後に両辺を\( a\)で割って
\[ 2=1 \]
となります!
私はこの問題を因数分解の授業の後によく紹介していました。
生徒は不思議そうな表情を浮かべながらも、真剣に計算過程を見つめてくれることがほとんどです。
「\( 1=2 \) 」の証明 その2
その1よりも単純な計算で進めることができます。
\[ b= a\]
として、この両辺に\( a \) を足します。
\[ a+b =2a \]
次に両辺から\( 2b \) を引きます。
\[ a-b =2a-2b \]
この式の右辺を\( 2 \) でくくると
\[ a-b=2(a-b) \]
となり、ここで両辺を\( a-b \) で割ると
\[ 1=2 \]
を導くことができます!
この証明が間違いである理由
では、「\( 1=2 \)」の2つの証明が間違いであるのはなぜでしょうか?
それは、どちらの証明も、数学ではやってはいけない「0で割る」計算をしているからです。
証明の後半で\( a-b \) で割る部分がありますが、どちらの証明も\( a=b \) からスタートとしていますので、\( a-b\) は\( 0\) なのです。
つまり\( 0\) で割る計算をしてしまったのです。
実は、数学では「\( 0\) でのわり算」はできません!
できないというより、「定義されない」というのが正しい表現になります。
※ざっくり言えば、0でのわり算は「決まらない」「存在しない」といったところでしょう。
したがって、今回の2つの証明は間違いであるといえるのです。
0で割るのが間違いである分かりやすい例
最後に、0で割るのが間違いである簡単な例をご紹介します。
次の式を見てください。
\[ 3\times 0 =4\times 0 \]
左辺も右辺も0となり、等しいのがすぐに分かると思います。
この式の両辺を0で割ってみると(0を取り除いて)
\[ 3=4 \]
となってしまいます。
\(3 \) や\( 4 \) のところは、どんな数字を当てはめてもOKです。
\( 0\) で割ると、おかしな結果になることが直感的に理解できると思います。
「\( 1=2 \) 」が紹介されている本
「知識ゼロでも楽しく読める!数学のしくみ」には、今回ご紹介した「\( 1= 2 \) 」の証明「その1」が載っていました。
この本はイラストや図解が多く、初心者でも数学の面白い話題に触れることができるのでおすすめです。
私はこの本を小学生の息子に買ってあげましたが、内容は分からなくてもイラストが豊富なので結構楽しめるようです。
まとめ
今回は文字式を用いた「\( 1=2 \) 」の証明を2通りの方法で示し、それが間違いであることについてご紹介しました。
どちらの証明も、数学でやってはいけない「\( 0\) で割る」計算が含まれていたため、「\( 1= 2\)」というありえない結論が導かれてしまったのです。
この問題を初めて見たとき「ものすごく不思議に感じた」という人は多いです。
みなさんは間違いを見抜くことができたでしょうか?
数学を教える先生や講師の方は、生徒にこの問題を考えさせてみることをおすすめします。
私も毎年のようにこの問題を紹介していますが、どの生徒も興味を持って考えてくれますよ。
\( 0\) で割ってはいけないことを強く印象付けることができる、とても面白い題材だと思います。